靴の向きが語る真実①
事件現場に再び集まった一同。
被害者・三宅太郎の部屋の前。そこには、なぜか靴が一足、逆向きに置かれていた。
「ねえ凡さん、この靴・・・玄関に向けて脱がれてるんだけど?」
「普通は部屋に向けて脱ぐはずだろ。つまり、被害者が自分で脱いだんじゃなくて、誰かが履いて持ち込んで置いたってことだな」
禿山が照明の光を頭で激しく反射させながら、冷静な分析を披露した。
凡間は腕を組み、ゆっくり頷いた。
「つまり―靴の向きが逆だった、ということだ」
「いや、それだけ!?分析とか、推理は!?」
「靴の向きが逆ならば・・・靴の向きが逆だったのだ」
禿山はため息を吐きつつも、話し始めた。
「だが確かに、これは証拠になるな。被害者が外から戻ったんじゃなく、犯人が靴を持ち込んで偽装した可能性が高い」
「凡さんの“当たり前”を勝手に補足したら事件解決に近づいちゃったんだけど!?」
現場に呼ばれたのは3人。
隣人の小暮、上の階の中川、そしてアパートの管理人の八木田。
凡間は、全員の前に立ち、偉そうに言った。
「犯人は、この中にいる」
真っ先に口を開いたのは小暮。
「違いますよ!俺じゃない!」
中川も続く。
「私じゃありません!」
八木田も、
「私もです」
と反論した。
凡間は一人ひとりの顔をじっと見つめ、真剣な声で言った。
「つまり・・・全員が、『違います』と言ったのだな」
「うん、そりゃそうだよ!」
「だが、『違います』と言ったということは、違わない可能性があるということだ」
「も う め ち ゃ く ち ゃ」
ここで禿山が口を開く。
「待て・・・違わない、つまりは“本当は犯人だ”ってことか?」
「そういうことだ」
「そういうことだ、じゃない!」
呼ばれた3人は、訳もわからずその場に立ち尽くしているばかりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます