聞き込みと無限ループと時々推理
現場近くの喫茶店「カフェ・コンプレックス」。そこでは、死体の第一発見者であるアパートの管理人・八木田が待っていた。
「見たんですよ、あの日。部屋に誰かが入っていくのを」
八木田は倒置法を使って話し始めた。
凡間がメモ帳を取り出し、聞く。
「ふむ……誰が入っていったのですか?」
「男です。スーツを着た。多分、あの人じゃないかと思うんです。小暮さん。隣人の。」
「・・・つまり、スーツを着た男が着ていたのは、スーツだったのだな」
「もうちょっと深い分析してもらえる!?ねえ!?」
留美がすかさずツッコミを入れる。
「スーツとは上下が揃っている衣服のことで〜」
「ファッション解説はいらない!」
「その小暮って男、今は?」
禿山が眩しい頭を覗かせながら言った。
「外出中だそうです、仕事で。戻る予定だと聞いてますよ、夜に」
「ははーん。一回小暮に話を聞いてみるとするかな」
「はぁ!? 俺が三宅さんを殺したって!? ありえないっすよ!」
「では、あなたは無関係ということですか?」
「はい、関係ありません!」
「ということは、関係がない、ということですね?」
「言い換えただけじゃん!」
「言い換えてもない気がしますけどね・・・というか、あの日、俺は部屋にいたんすよ。来たのは宅配便の人だけです。俺、証明できます!」
「つまり、あなたの証言によれば、あなたは無関係だという証言をしている」
禿山が訊いた。
「……ちょっと待てよ。宅配便って、いつ来た?」
「午後2時くらいです。インターホンの履歴にも残ってるはずです」
「被害者の死亡推定時刻が2時半前後だから……それって逆に、犯行可能じゃない!?」
「つまり、犯行可能時間に、犯行可能だった、ということだな」
「全部さっき言ったことを繰り返してるだけなんだよなぁ・・・・」
留美はため息を吐いた。
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