うちの探偵がゴミすぎる!
御弟子美波留
密室殺人と当たり前の真実
秋のある日、凡間探偵事務所の助手・川崎留美(かわさきるみ)は、男性の死体と、凶器と思われる血のついた果物ナイフのそばで思考を巡らせていた。
現場は、とあるアパートの一室。ドアも窓も内側から施錠された、所謂“密室”というやつだ。
「どう見ても、自殺には見えないわね・・・」
そこへ、ゆっくりと入ってくる一人の男。白いコート、柔らかい帽子。やたらと堂々としている。
「名探偵、凡間 凡(ぼんま・ぼん)、参上!」
「……ああ。来ちゃった」
「ふむ。これは……人が死んでいるな」
「うん、誰が見てもそうね」
凡間はしゃがみこみ、被害者のポケットから財布を取り出した。
「財布だ。中には現金と、免許証がある。つまり――」
「つまり?」
「これは、財布だな」
「見りゃわかるわよ!」
凡間はドヤ顔でうなずいた。
「ふむ。そしてここが密室であるならば――これは、密室だ」
「・・・・・・・・。」
留美は、やれやれ、といった調子で座り込んだ。
しばらくそばでやり取りを聞いていた刑事の禿山(はげやま)が、ツルツルの頭を光らせながら言った。
「で、探偵さんよ。犯人は誰だと思う?」
凡間は少し考えるふりをした。
「犯人は……犯行を行った人物だ」
「その通りだけども!!」
留美が額を押さえた。
「このままじゃ、ただの無駄足じゃない……。ほら、何か、何か有益なこと言ってよ!」
すると凡間が、窓を見ながらつぶやいた。
「この窓……外から鍵が開けられるなら……中に誰もいなくても、外から鍵が開けられるな」
「……! それってつまり――」
「外から鍵が開いたということだ」
「説明になってない!」
そんなしょうもないやり取りが展開されつつも、なんとか話がまとまってきた頃、禿山が目を見開き、
「外からワイヤーか何かで鍵を操作した可能性がある……そういうことか!」
と叫んだ。
「その通り。つまり――そういうことだ」
凡間は、すべてを見通したかのような顔で頷いた。
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