19話「第0回イベント開始!」

 次の日。

 皆イベントに参加するために、それぞれ装備などのチェックやフレンドたちと談笑したりと、雰囲気が盛り上がりつつある。

 週末でいつも以上にごった返しているレグルスタードの街に、リアとアミは集まっていた。


「いよいよイベントだ~!」

「楽しみだね~!」


 二人も街で待機していると、公式からお知らせログが届いて今回のイベントに参加するかどうかについての選択肢が出てきた。

 迷わず「はい」を押すと、参加登録されたことを知らせるログが届いた。

 周りを見る限り、参加すれば多少なりともゴールドがもらえることや、初めてのイベントということもあって、相当な人が参加をするようだ。

 ログに改めて公式から、今回のイベントについての詳細がアナウンスされた。

 その中に、新しく追加された項目が目に入ってきた。


 追加項目として、10連勝をしたプレイヤーにエキシビションマッチを公式から依頼させていただくことになりました。

 なお、エキシビションマッチは全プレイヤーが街の中で観戦ができるようになります。

 人目が気になる方は参加拒否も出来ますが、是非ともイベントへのご協力をお願いいたします。


「ルール自体は変わってないけど、エキシビションマッチっていうのがあるらしいよ!」


 エキシビションマッチの詳細は以下の通り。

 ・同職の10連勝同士プレイヤーで戦闘を行う。

 ・なお、エキシビションマッチ内での勝敗はイベント結果に影響しない。

 ・参加したプレイヤーは、一律で追加のゴールド報酬あり。


「10連勝を達成したプレイヤー同士で戦うのかぁ。これはガチ勢のぶつかり合いになるね。イベント結果に反映しないとは言うものの、実質誰がトップランカーか決める戦いになるしね」

「なるほど! ここで勝ち残れば、その職業で相当上位プレイヤーってことになるのかぁ」

「莫大な人数がいるから、トーナメントなどは出来ない。だからこうして、あらかた10連勝出来る人まで絞ってから、こういう戦いをするのね。結構考えられているシステムだなぁ」


 そもそも10連勝出来るプレイヤーが、2の10乗で1024人に一人くらいしかいない計算になる。

 つまり、各職のプレイヤーが1万くらいいても、10連勝が出来るプレイヤーが10人もいないという計算になる。

 その中で、エキシビジョンで更に勝敗をつけたら、自然とトップランカーが誰か、映像を通して全プレイヤーが知ることになる。


「まぁ、10連勝しないと関係ない話だねー」

「いや、リアは割と本気で参加するかどうか考えといた方が良いんじゃない……?」


 そんな話をしていると、街の上層の空き地エリアにイベント会場に移動することの出来るワープ装置が設置されたとのアナウンスがされた。

 上層へと足を運ぶと、プレイヤーたちがワープ装置に足を踏み込んで移動していく。


「さて、そろそろだね! 10連勝出来るように頑張るか! リアも頑張ってね!」

「うん!」


 お互いにねぎらいの言葉をかけて、それぞれワープ装置に足を運んだ。

 光に包まれると、コロシアムのような空間に飛ばされた。


「ここで戦闘するのかぁ……。アイスワイバーンがいた広場よりも広いなぁ」


 周りをキョロキョロと見渡していると、目の前に対戦相手の男プレイヤーがワープしてきた。


「初期装備のガキか……。これはもらったな」


 相手はレベル25で、見る限り装備もそれなりに整えているようだ。

 カウントダウンが始まり、0になると戦闘開始のゴングが鳴り響いた。

 開始と同時に、男プレイヤーはリアに飛び込んでくる。


「何があるか分からないし、先ずは……イリュージョン・カウンター!」


 相手の攻撃がリアに到達する前に、【イリュージョン・カウンター】で分身を展開させる。


「な、何だこれは!?」


 男は困惑し、一先ず攻撃を仕掛けてくるが、分身が爆発した。

 その間に、リアは自分の短剣に凄まじい電気を纏わせると、そのまま地面に突き刺して、男に向かって電流を走らせた。


「な、何がおきているんだ!? ぐあああああ!!」


 男は【ライトニング・チェイン】をまともに喰らって、そのまま消滅した。

 あっさりと初戦の相手を撃破し、勝利を知らせるログが届いた。


「よしよし、この特技で普通に行けそうだね!」


 色々な技を覚えたが、リアは【ライトニング・チェイン】が結構気に入っている。

 青い電流が流れるのが、とてもカッコいい。


「次の対戦はどうなるんだろ……」


 勝利が決まってから1分ほど経っても、リアの周りに変化が訪れない。

 それもそのはずで、同レベルの盗賊同士になると、一撃で倒せるほどの攻撃を与える相手は普通いない。

 状態異常や攻撃の手数で減らしていく戦闘が多い中、リアだけが一撃で消滅させるということをしているので、他の試合が終わるまで待ちぼうけになってしまう。


 この後少し待つと、また目の前が光に包まれて、戦闘会場が変わって新しい対戦相手が出てくる。

 対戦相手は、リアの初期装備に最初馬鹿にして、その後リアの【ライトニング・チェイン】で消し飛ばされる。

 不屈の魂があるので、次から【イリュージョン・カウンター】を展開せずにいきなり【ライトニング・チェイン】を展開したが、余裕で勝利した。

 二戦目からレベル30のプレイヤーで、装備もそれなりの相手が出てくるが、【ライトニング・チェイン】を耐えきれるほどの能力を持ち合わせているプレイヤーは誰もいない。

 すぐにリアの攻撃で消し飛んでしまい、リアは戦いを終えるたびに次の戦いまでぼーっと待ちぼうけていた。


「イリュージョン・カウンターぐらいは使うと思ったんだけどなぁ……。まだライトエレキスローとか出してくるなら分身も張るけど、それもしてこないもんなぁ」


 レベルが30制限で、ステータス差がつかないため、ほぼ同時にお互いに動くことが出来る。

 こうして戦闘をして分かったことだが、【ライトエレキスロー】は遠くから攻撃できるが、その他の短剣攻撃は切りつけたりするので、ある程度近づかないといけない。

 リアの使う【ライトニング・チェイン】は地面に電流を走らせるので、それなりに距離があるところから攻撃できる。

 最近放置していたが、短剣スキルにポイントを振ることで、さらに強力な短剣の特技が得られるらしい。

 その特技が接近して繰り出す技のようで、みんな同じように飛び込んでくるらしい。


「みんな大技決めたいのかな? 盗賊VIT高くないけど、STRも微妙だから、戦闘が長引きがちで、出来るだけ大ダメージを狙ってその選択になるのかな?」


 こうして、だんだんとリアは盗賊の戦闘事情への理解が進みつつあった。

 ただ、リアがちゃんと盗賊として戦い続けていれば、対戦相手のような戦闘スタンスにも気が付いていたはずなのだが。


「これ、私が戦闘を終えるのが早いだけかな……?」


 そして、自分の戦闘が異常に早く終わっているだけだということに気が付き始めた。

 そんなあまりにもフワフワとしたスタイルで、リアはどんどん勝ち進んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る