11話「さらなる特技習得」

 アミに連れられて、レグルスタードの上層に足を運ぶ。

 ただ、今後何かが建設されるであろうという広大な土地と「只今準備中!」という看板だけが建てられている。

 上層から、高原フィールドに出ると、また知らないモンスターが徘徊している。


「目的のモンスターは、この高原を超えたエリアに出るんだよ」


 高原を更に進んでいくと、ボロボロの建物がチラホラと見られる廃墟の村にたどり着いた。

 日が出ているのに、それでも薄暗いところで、かなり気味が悪い。


「このエリアで夜になると、出るモンスターがいるんだよね。目的はそのモンスターだよ」

「え、そうなの? なんかすでにもう気味が悪い場所だから、夜になるまで居たくないんだけど」

「怖いところ、苦手だもんね。ホラゲーとかは頑なにやらないし」

「だって、怖いの嫌じゃん……」


 プレイヤーがそれなりにいるのでまだいいが、これでアミと二人だけなら、心が折れている。

 そんな話をしていると、ゲームの中での時間が進んで夕暮れから夜になっていく。

 廃墟の建物が、大きな化け物のように見えて、今すぐにでも帰りたい。

 そんなリアの前に、白く何かが漂い始めた。

 そしてその白い物体に、いきなり顔が浮かび上がってきた。


「いやあああ! 出たああ!」

「こいつが目的のモンスター、ゴーストだよ!」

「アミってば、絶対に私にいたずら目的でこいつを勧めたでしょー!」

「いやいや、本当に使えそうな特技持ってるよ。まぁ怖がってるリア見れて、ちょっと嬉しいけど」

「うっうっう……」


 意地悪なアミをちょっと恨みそうになるが、少し落ち着いてみると、そんなに怖い顔をしているわけでもなかった。

 すぐに慣れてきて、戦闘態勢に入る。


「特技出すまで、盗んでていい?」

「うん。ちなみに、このゴーストは特技2つ持ってて、私がオススメする方じゃない技も、面白い技ではあるよ」

「特技を2つも持ってるのか〜」


 やはり先に進んでいくと、モンスターもどんどん強くなっていく。

 盗みを成功させた後、特技を繰り出すまではしばらく待つ。

 すると、ゴーストは分身を始めた。


「お、来た!」

「この技?」

「そうそう! じゃあ、攻撃してみて?」

「ど、どいつに攻撃すればいい?」

「どれでもいいよ! 適当に攻撃で」


 アミの言葉通り、分身して多くなった対象の中から適当に攻撃してみる。

 すると、リアの攻撃は分身が崩れるだけで空振りに終わった。

 そして、崩れた分身が爆発した。


「うわっ!」

「【ヒールⅠ】!」


 爆発でダメージを食らったところを、すかさずアミが回復してくれた。


「ごめん、ネタバレ防止で敢えてこうなることを黙ってたんだけど、言ったほうが良かったかな?」

「いや、多分爆発するとか言われたら、攻撃怖くてしにくかったし、実際に痛いわけでもないし、大丈夫!」

「これが、ゴーストの特技、【イリュージョン・カウンター】だよ!」

「分身で自分の身を守りつつ、相手にダメージも与えられるのか……!確かに強い!」

「でしょ!」


 分身を使うというのも、忍者ではないが、身軽な盗賊のイメージに合っている。

 そして何より、実用性がかなり高そうだ。


 しばらく盗んでは、分身の特技を食らってから討伐を繰り返す。

 やはりコピー成功率は低く、なかなか、習得とはいかない。

 その中で、もう一つの特技を先に習得した。


 ―特技をコピーしました。

 鬼火……火の玉をぶつけて、相手に攻撃する。火属性攻撃。相手に当てることで他の火属性攻撃の攻撃力アップ。この効果中、氷属性の攻撃半減。水属性の攻撃を当てると効果がリセットされる。


「火属性の特技を持ってると、使いやすそうだね」

「それか、魔法使いの火魔法と合わせると、効果的かもね!」

「なるほど、マルチで他のメンバーのサポートが出来るのか」


 ゴーストが持っていたもう一つの特技、それが【鬼火】という特技だった。

 火属性効果を高めるという技で、なかなかに特殊なタイプだった。

 マルチだと効果を発揮できるが、ソロでは火属性攻撃を持っておかないと、効果が発揮できない。

 この特技の活かし方は今後の課題として、引き続き分身特技獲得のために、ひたすら戦闘を繰り返した。


「なかなかにコピー出来ないね……」

「成功率はかなり低いね。一度でも成功すると、今後ずっと使えるんだけどね……」


 ゲーム時間の日の出まで、ひたすらゴーストとの戦闘を繰り返していく。


「お、来た!」


 空が少し明るくなり始め、タイムリミットが近づき始めた頃、ついに特技を取得した。


 ―特技をコピーしました。

 イリュージョン・カウンター……自らの分身を作り出し、攻撃を受けると爆発させる。攻撃2回分回避可能の分身を作り出す。分身展開時に攻撃された場合、受けたダメージの6分の1の爆破ダメージを与える。


「お、何とか夜明けまでに間に合ったか〜!」

「ありがとう! 分身の跳ねっ返りの固定ダメージがある以上、回復必須だったし」

「いやいや、やっとなんか一緒にやれてるって感じがしたし、良かったよ〜!」


 アミのおかげで、何とか目的の技を習得することが出来た。

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