人間は、どこまで強くなれるか?

僕はこの物語に、昨今話題になっているAIの問題を見出しました。
AIの使用には「人間性」が問われます。便利な力、だからこそ、「使い方」「人としての在り方」が問われる。これが弱いあまりに道を踏み外す人はたくさんいます。SNSでもよく見かけますよね? 
この作品はそんな、「人としての誇り」「人間性」を問う物語です。
大袈裟? そんなことはないです。
赤色病という病気が、この作品では扱われます。もちろん架空の病気です。だけど恐ろしい。
分かりやすく例えると、ゾンビ化する病です。意思を失い、破壊活動を繰り返す。恐ろしいところは、身体強化がされるところです。ゲームなんかで覚えはありませんか? 走り回るゾンビほど厄介な敵はいません。
この病気はつまり、「人間性の消失」と捉えられます。意思を失い破壊の限りを尽くすのです。
一方で主人公の二人、親子なのですが、この二人も赤色病にやられています。しかし自我がちゃんとある。「人間性」を失っていないんですね。そしてこの二人は、「人間性」を失ってしまった人たち……赤色病の患者、もう人には戻れない人たちを救いに行く。
しかし悲しい救い方です。ほぼほぼ殺すことと同義。しかし救済のある殺し方です。きっとこの選択をされて、感謝する人は多いでしょう。
失った「人間性」は、並のことでは戻りません。
それでも、それが救いになるなら。二人はそんな救済と、さらに赤色病の原因を探りに旅に出ます。
道中、たくさんの人を「殺して」行きます。しかしそれは救いです。失った「人間性」を、きちんと「失わせて」あげる。
そしてゆくゆくは、その「人間性」を奪った張本人……国民から「人たるもの」を強奪した人間と戦います。
まぁ、あらすじはここまで。物語の行く末は皆さんの目で確かめてください。
これは人間の強さを問う物語です。
主人公たちは、何度もその「人間性」を問われ、その度に答えを出して、強く進んでいきます。

社会で生きていると……それが学校か、あるいは仕事かを問わず、世の中という大河の中で生きていると、時折「自分は何者なのか」分からなくなります。
まさに「人間性」を失おうとしているのです。

この作品は、特効薬のようにすぐにあなたに「人間性」を取り戻してはくれません。
でも、あなたが「人間性」を取り戻すきっかけに……あなたが「自分なら『人間性』を取り戻せる」と思える自信を、確信を持てるようになる手助けをしてくれます。
人間はどこまで強くなれるか。
あなたに問うのと同時に、あなたにそれを与えてくれる、そんな作品です。

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