第17話 未来

 数年後。

 窓一面に広がる夜景が、宝石のように瞬いていた。

 ここは海外の大都市にある、マンションの最上階。

 俺のオフィス兼、住居だ。



成功の証


 テーブルの上には、海外の企業から届いた契約書。

 loudyは国境を越え、世界に向けて動画を発信する存在になっていた。

 かつて「出来ない」と笑われた俺が、今は「唯一無二」と呼ばれている。


 ソファに腰を下ろした佐伯が笑いながら言った。

 「ここまで来たな、創真」

 「まだ通過点だよ」

 自然に返せた自分に、少し驚いた。



美優との時間


 キッチンから、美優がワイングラスを二つ持ってきた。

 「はい、社長さん。お疲れさま」

 「ありがとう」

 グラスを合わせ、赤い液体が静かに揺れる。


 彼女の笑顔を見ていると、成功の実感よりも、隣に彼女がいることの方がずっと大きな意味を持っているように思えた。



未来へ


 大きな窓の前に立ち、眼下の街を見下ろす。

 幾千もの光が交差し、絶え間なく動き続けている。


 ――かつて、布団から出られなかった俺が、今は世界を見下ろしている。


 9割の人が出来ることは、俺には出来なかった。

 けれど――1割の人に出来ないことを、俺は出来る。


 その確信と共に、俺は静かにワインを口に含んだ。


 未来はまだ、これからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ADHDでも居場所はある 堤さん @wani0829

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画