第12話 君の言葉

 loudyが大きく話題になり、イベント出演の依頼が来るようになった。

 その中の一つ、小さなトークイベントでのことだった。



出会い


 会場の隅でスタッフをしていた女性がいた。

 長い黒髪を一つにまとめ、真剣な眼差しでメモを取っている。

 休憩時間、偶然隣に座った俺に、彼女が声をかけてきた。


 「今日の話、すごく面白かったです」

 「え……あ、ありがとう」


 彼女の笑顔は、不思議なほど柔らかかった。

 その笑みに、胸が少し温かくなるのを感じた。



名前


 「私、中野美優っていいます。広報の手伝いで呼ばれてて」

 「創真です。……えっと、loudyの」

 「知ってます。動画、全部見てますよ」


 驚いて言葉を失った。

 俺の作ったものを、ここにも見てくれている人がいた。



支える言葉


 イベント後、少し話す時間があった。

 美優はふと真剣な表情になり、こう言った。


 「創真さんって、“普通”じゃないところがすごく魅力だと思います。

  だから、普通にならなくていいんですよ」


 その言葉に、心臓が強く鳴った。

 雪菜に「疲れた」と言われた夜の記憶が蘇る。

 “普通じゃない自分は重荷だ”と信じていた。


 でも今、目の前の彼女は、まるで反対のことを言ってくれた。


 「……ありがとう」

 それ以上の言葉は出てこなかった。



小さな芽


 帰り道。

 スマホの画面に「美優」と打ち込んだ連絡先を見つめながら、胸がざわめいていた。


 ――もう一度、誰かを好きになってもいいのかもしれない。


 夜風が心地よく吹き抜ける。そ

 その風の中で、俺は小さな芽が心に芽吹くのを感じていた。

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