第四章

第四章 つめよる影


 ミアは 肩で息をした

 怖い……どうしよう

 なぜ?

 2人はいつも笑顔なのに?

「ミア」

「ミア」

 ……行こう……

 ……行こう……

 重く震える足が1歩を 刻む

「あれを抜ければ 長老の樹だ」

「樹だ」

 行ってはいけない!

 心が叫んでる

 ……逃げろミア……

 リョウの声?

 ミア?

 ミーア?

 ……逃げろ……

 だっ……

 ミアは 踵を かえした やみくもに逃げる!逃げる

 恐怖が 絶え絶えの 呼吸より辛かった

 逃げる

……こっちだミアおいで!……

 黒髪の あの人が?

 幻視なのか?

 手を引いてくれる!

 こっちだ!

 森を抜ければ そこは 大きな文明都市だった

「トウキョーだミア」

 彼が振り返る

 だけど

 溢れる涙で反射して良く見えない

「リョウ!」

 ふ……

 彼は消えた

「リョーウ!」

 ミアは 叫ぶ

 あそこに降りれば

 2人は追って来れない

 何かがそう告げる

 ミアは 涙を 拭い 拭い かけた

 怖い これは賭けだ

 背中に2人の声は無い

 ……ミア……

 あの慕わしい声

 ミア……

 ミアは降りていく

 下の都市トウキョーへ


 東京2025年8月

 照りつける日差し コンクリートの 地面

 だけどミアにはわかっていた

 ここが今は1番安全

 ミア……

 突然呼ばれて振り返れば

 美亜!ダメでしょ?手を離したら!

 母親らしき人が

 お団子結びの 女の子を 叱っていた

 ……ミア!……

 ミアは 振り返って ぐるり見渡した

 しかし その姿は無い……

 わ……

 かけてきた少年が転んだ

「あ!」

 ミアは そっとたちあがらせてあげる

「タケシ!あ!すいません」

 青年がかけてくる

 その精悍な 面立ちが!

「リョウ!」

 青年は 首を傾げた

「どうして僕の名を?」

 と 話しかける

「あの……」

 なんて言ったらいいのだろう

「リョウなのね?」

「はい?」

 青年が頷く

「確かに僕は リョウですけど……あなたは?」

 ミアよ!

 全身が叫んだ

「ミア………………」

 青年が反芻して考え込んだ

「ミア?」

 どこかで……

 と ミアの耳飾りに リョウが目を止めた!

 待ってください!

 その耳飾り!

青年がジーンズの ポケットを 探った

 これ!对ですよね?

 手を見れば 片方の耳にしかない耳飾りの 片方

「……!」

「ミア……」

 リョウ!

 ごっ……

 上天に 黒い渦

 中からユニコーンと パチールが 現れた!

「あ……!」

「いたね」

「いた」

 まわりには 渦はおろかユニコーン達すら見えてない

 だけれど実体だ!

 確信があるミアだった

「逃げよう!ミア!タケシ!」

 リョウは少年を左に抱え 右にミアの手を取る!

「いくよ!」

 ミアには 不思議と恐怖は無い

 胸が 早鐘のようだが 不安じゃない

「お待ちミア」

「ミアお待ち」

「待ってたまるか!」

 リョウは 背後にその言葉を投げた

「さぁこっちだ!」

 鳥居の中に駆け込む

「大丈夫!多分見つからない!僕ここに来ると 癒されるんだ……ね……ミア?」

 パチンとウインクを くれる

 リョウ……

 その前を鳥居を 挟んでユニコーン達が かけて行った

「行くよミア!」

 立てるかいリョウは手をそえた

「ありがとう……」

 嗚呼 彼だ!彼がいる!

 リョウ!

 でも名前しか知らない……

 思い出せない!

「走ろう」

 なんだろう自由なんだ……

 ミアは 浮き立った!

 自由!

 自由!!

 自由!!!

 そのまま 雲の上ですら走れそうで ミアは 歓喜した

「ここだ 入って 」

 そこには 長谷川とあり

 したに タクマ アカリ リョウ タケシ とある

 リョウの家?

 ミアが玄関を入って見渡した

「あまり見回さないで……綺麗じゃないから!」

 玄関!そこで靴は脱ぐ!覚えた

 入って 革張りの 長椅子がある部屋へ

「これ……」

「ああビニールさ!父さんの趣味でね」

 へへ……

 リョウは頭を かいた

「それにしても君!あんなのに追われてるの?大丈夫?」

 リョウには 2人が見えていた

「ううん……怖いの……でも……」

 ぎゅ!

 彼がミアを抱きしめた

 懐かしい香り

「怖かったね!でも僕が守る!」

「どうして?」

「どうしてだろうね!でも そうしたいから」

 リョウが 強くうなづいた

 だって!そうしたいから!いいだろ?ミア

 ミアは 大きくうなづいた

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