第二章

第二章 森の宴


 ミアは パチールと テルの導くまま 森の深淵へと進んでいく

「ミア仲間だよ」

 仲間だよ

 テルの後をパチールが追う

「さあ見てご覧」

 そこには湖が 広がり

 水の小人の集落があった

「来たねミア」

 小人の 長が かけてきた

 ポテポテと やわらかい音がする

「ミア 今夜は宴だ……それまで休んでおいで」

 休んでおいで……

 また小人たちが復唱する

「……」

 ぞくり

 何かがかけた

「ミア さあ これをお飲み」

 小人10人程で抱えてきた盃

 それには 黄金の 液体が 注がれていた

「季節の花の蜜酒だよ」

「お飲み」

「お飲み」

 まただぞくぞくする

 でも 周りは悪意も無いようで

 キャッキャッ戯れていた

 月が中天に かかる宵

 水の小人が 歓待してくれた

 らんらら……らんらら

なんだろう そのリズム

 聞き覚えがある

ぬる……

 身体を濡らす血 ミアが 跳ねるように立った

「どうした?ミア」

「どうした?」

 逃げ出したい

 でも何から?

 ミアは震えた 小人が どんぐりの粉で作ったパンを運んで来る

 ミアは 腕に爪をたてた

 怖い 何故 どうして?この幻視はなぜ?

「ミア!」

 はっとミアは目を上げた

「お食べ」

「お食べ」

 また復唱

 心臓が ドキリと 脈打った

 さぁミア

 パチールが かけてくる

「皆で歌おう!」

「歌おう」

 らんらら……らんらら!

 らんらら……らんらら!

 ぞくぞくと 鳥肌が立つ

 何か大切なものを わすれている

 その恐怖に 身体が震えた

「らんらら……らんらら」

 こめかみが ズキンと 傷んだ

「さぁミア」

 吐き気がしてくる

 蜜酒に酔ったのか この恐怖のせいなのか?

「らんらら……らんらら」

 や……やめて……

 革鎧を着た青年……

 抱きしめる自分 その手は血に濡れて

「きゃ!」

「ミア?」

「ミア?」

 小人がわらわらやって来る

 ミアは 岩壁に 背を預け深呼吸した

「何かみえたの?」

「何かみえたの?」

 首を左右に激しくふる

「ミア座れるかい」

 テルが 言う

「座れるかい」

 ダメだ

 胃液がこみあげる

「ミア?」

 どさっ

 ミアは 倒れ込んだ

「寝ちゃったね」

「寝ちゃった……」

「ふふ……ふふ……」

 微かな笑い声

 ミアには届かない

「寝ちゃった……」

 

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