第9話 絶対音感は風邪ひくとつらいよ(3 困った幼馴染)

 晴歌は買い込んできた食材を選別しながら、コンロに鍋をかけた。手っ取り早く栄養を取りたいときには鍋が楽だ。電気ケトルの湯が沸くのを待ちながら、カット野菜を鍋に放り込んでいく。

「熱はあんの?」

 結局当然の如くアパートまでついて来た暁時に、晴歌は首を振った。

「熱はないんだが、寒気とだるいのと、頭がガンガンする」

 暁時は流しに寄りかかり、晴歌の顔を凝視した。

「本当にお前はポーカーフェイスだよな。大体いつも一緒にいるってのに、お前が具合悪いってのを見抜けた試しがねえ」

「別に見抜けなくていいんだよ……」

 晴歌は沸いた湯を鍋に注ぐ。もうもうと湯気が立つ。

「てかお前、いつ帰るの」

「気が向いたら」

 暁時はその日は気が向かなかったらしく、晴歌が眠って起きても、まだ同じ部屋にいた。朝、晴歌の具合はすっかりよくなっていたが、暁時が寒気とだるさと頭痛を訴え、呆れた晴歌が家まで送って行った。

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