俺の足裏をくすぐってくれ
百壁 一千翔(もへき いちか)
プロローグ
一番になりたかった。
どんな分野や趣味嗜好でも良い。
主席の座を守り続けているクラスメイトがいて、彼を目の辺りにして強く思った。
俺が通っていた学校には、様々な事で一番の奴がいた。
常に成績がトップの人。体重六〇〇キロを越えてギネスブックを更新した正真正銘のデブ。世界一の早漏になりたいが為に、毎日大人のグッズを男のシンボルに装着していたり、メスゴリラのぬいぐるみと毎日のように疑似SOxしている変態等もいた。
俺には、あらゆる事で一番になっている人達が輝かしく映ったのだ。
夢と期待に羨望していた俺は、どの事柄で自分が一番になれるかを必死に考えた。
あの頃も、今も、俺は承認欲求の塊だ。
度し難い変態であるクラスメイトを見習おうと、母親に俺の息子を踏ん付けてくれと頼んだりもした。その結果「そんな子に育てた覚えはないわ!」と叱責を受けてしまった。
その為、方向性を変えて世界一辛い食べ物であるキャロナイナ・リーパーを五〇個分、三分以内で食べたりもした。その結果、数時間トイレと親友になった。
またもや路線を変えて、誰かの一番になりたいと願い、女子生徒の全員にラブレターを書いて下駄箱に忍ばせた。その結果、全員にシカトされたが、ゲイに言い寄られる羽目になった。
最後に、学校一のバカになりたいと思い、全部のテストを白紙で提出した。その結果、進路相談室で「進学は絶望的」と問題児のレッテルを貼られた。さすがに高校に進学したい為、次のテストは全力で挑んだ。
さて――ここまでやってきて、自分が何に対して一番になる事ができるのだろうか。
俺は一つの答えを見つけた。
高校に入学してから、スクールカーストの頂点に立とうと決心した。
『偽物』でも良いから『本物』の存在になりたい。
そう思ってから、俺は即時に行動に移した。
学園に入学して、生徒のトップに立つ事が出来れば、さぞ気持ちが良いだろう。
その為に色々と勉強した。髪型やファッションの知識を得ようと雑誌を読んだり、対話術のハウツー本を熟読したりした。時には、赤ちゃんプレイが大好きな父親のパパ役になって、お小遣いを稼いで、その全額を女の子に渡して異性との接し方のテクニックを学んだ。
これは余談だが、パパ役を演じている際、ミルクが欲しいと父親に言われて、俺の特性の液体を飲ませてやろうかと思い至ったが、さすがに自重して粉ミルクを作った。すると、父親は「乳首出せやコラ」と怒鳴られてしまったので、お披露目する事になった。思いっきり噛まれて、一生消えない傷ができたのは、ここだけの話にしてほしい。
受験期に突入した際に、家の近くにある私立光が丘学園に入学する事を決意した。
そして、無事に合格して――晴れて高校一年生という肩書きを得る事ができた。
――学園で、一番になりたい。
そう奮い立った俺は、入学式の時から必死に自分をアピールした。幸い、中学時代に色々と会話する上でのテクニックや技術を応用できたので、直ぐにトップの座に君臨する事ができた。
そして、俺は学園で最強のチームを組む事にした。
その名は『成田ワールド』
俺――成田功助が築きあげたと意味合いを込めて、そうグループの名前を名付けた。
一年生の頃から、一生懸命、努力して築き上げたチーム。
俺を含めて合計四名の、選ばれし者達だった。
自分には人を惹き付ける才能があると信じて疑わなかった。
しかし、天は二物を与えずという言葉が存在する。
俺には致命的な弱点があった。いや、少し語弊があるかもしれないから訂正しよう。自分には・・・・・・一般人とは変わった性癖をもっている。
成田ワールドの一員である女の子に、その性癖を持っている人の事に対して抱く感情を聞き出したら「気持ち悪い」と一瞬された。
俺は『偽物』の存在だが『本物』近い存在に成り上がった。
だが『本物』になるのは、まだまだ努力が足りていない。
確かに、今まで同類と出逢った事はなく、俺は変人だと確信を得てしまった。
もし――学園の生徒に知られてしまったら、これまで築き上げてきた地位が崩壊する危険性を兼ねている。
だから、この性癖は墓まで持っていくつもりだ。
その性癖を隠しながら、俺は高校生活を謳歌している。
しかし、とある女の子に、自分の性癖を知られてしまっった。
その女子生徒と交流をもつようになってから、俺の学園生活は一変した。
彼女の名前は、否笠擽子。
所謂、お一人様至上主義を掲げている、常に一人ぼっちで在り続けてきた子だ。あまり見た目に拘っておらず、誰かと絡む事もなく、常にノートに書き物をしている印象しかなかった。
そんな彼女と接点ができたのは、俺にとっては有り得ない状況だった。
これは、とある性癖をもった俺と根暗な彼女が共犯者になる、一つの物語。
さぁ――俺達の喜劇の始まりだ。
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