第9話 月見と庭の子
ある日の夜、小梅の家の縁側には、妖怪たちが集まっていた。
ナミとナキはお団子を並べてはしゃぎ、サノはふわふわ浮かびながら月に向かって歌をうたい、ハルは屋根の上から「月に向かって飛べるかな〜」と羽ばたいていた。
ミワはちょっと離れた場所で腕を組んでいる。セイは行燈の火を灯しながら、静かに座っていた。
「みんなで月見なんて、初めてだね」
小梅は笑った。
「まだ夏だけどね!あ、お団子、いっぱいあるよ!」
そのとき——庭の奥から、風がふわりと吹いた。
「……来る」
セイがぽつりと呟いく。木々の間から、マホロバが現れた。三本足の黒いカラス。静かに歩いてくる。
その後ろには、人面樹がゆらりと枝を揺らしながら、笑っていた。
タンタンコロリンは、カキの実をぽとぽと落としながら転がってきた。
「庭の子たちだ!」
ナミが嬉しそうな声を上げる。マホロバは人間の心を簡単に理解ができるため、仲のいい人面樹やタンタンコロリンも小梅に心を開くことができるのだ。
「行けたら行くとは言ってたけど、ほんとに来てくれたんだ!」
サノは空中でくるくる回った。マホロバは、縁側の端に立つ。
「月が、呼んでいた」
その声は、風のように静かだった。人面樹は、笑いながら言った。
「小梅ちゃん、今日の月はいい顔してるね」
タンタンコロリンは、カキの実を小梅の膝にぽとんと落とす。
「お月見には、柿もあったら楽しいでしょ」
小梅は目を輝かせた。
「みんなでお月見、すごく楽しいね!」
火が灯り、風が吹き、笑い声が庭に広がった。月は、静かに見守っていた。
人間と妖怪が、同じ夜を楽しんでいることを。
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