第8話 ろくろ首、ミワ

ミワはろくろ首。

昼間は普通の人間の姿。夜になると首が伸びる。別に、首が伸びるのを見られたくないわけではない。誰かと関わるのがあまり好きではないだけだ。

それは人間に限らず、妖怪に対してもそうだった。ただ、まあナミたちには見つかってしまったから仕方がない、とあきらめていた。

小梅はそんなミワにも、毎日声をかけていた。


「……なんなの、あの子。馴れ馴れしい」


でも、心の奥では——少しだけ、嬉しいような気もしていた。

ある夜、小梅が廊下で転びかけた。躓いた瞬間、ミワの首がすっと伸びて、転ぶ小梅の体を首で支えて、体を起こしてやる。

そう、人とかかわるのが嫌な癖に世話を焼くのは好きだったのだ。なんとも厄介な性格である。


「ミワちゃん!」


小梅は目を輝かせた。相手にしてくれなかった人が助けてくれるのだから、当然の反応だろう。


「助けてくれたの?ありがとう!」


ミワは慌てて首を縮めた。


「うるさい。あたしはただの通りすがりだよ」


「首が伸びてた!すごい!かっこいい!」


ミワはそれには答えず、障子の向こうに消えた。でもその夜、ちゃぶ台の会議でぽつりとつぶやいた。


「……小梅って、悪くないかも」


誰も驚かなかった。むしろ、むぎが笑うように「にゃー」と鳴いた。

こうして、ミワも少しだけ、小梅に心を開いた。首は伸びるけど、距離は縮まっていった。

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