第6話 烏天狗、ハル
小梅は最近、妙なことが続いているのに気づいていた。
・おやつが消える
・洗濯物が風もないのに飛ばされる
・玄関の靴の位置と向きが逆になっている
「これは……妖怪の仕業だ!だって、お母さんもお父さんもこんなことしないもん」
小梅は真剣な顔で推理を始めた。ナミとナキは違う。多分。サノは浮いてるだけ。だとしたら、知らない子だ。
と、その時、風が吹いて机の上に置いてあった書類がふわりと舞い、床に落ちる。でも、家のどこの窓も締まっている。
小梅は犯人を捜すために、風の吹いた方向へ目を向ける。と、黒い大きな翼が目に飛び込んで来た。
「見つけた!悪戯してたの、君だったんだね!」
すると、黒い翼を持った子、ハルが小梅の方を向く。ハルは羽を広げて、少し距離を取った。小梅は不思議そうな顔で尋ねる。
「……なんでバレたの?」
「怒ってるの?」
小梅は首をかしげる。ハルは、少し不安そうに答えた。
「……ううん、怒ってない。でもさ、普通、君は怒るでしょ?靴逆にしたり、おやつ取ったりしたら」
過去に、悪戯をして怒鳴られたことがある。追い払われたことも。でも、ああいうのはなぜかやめられないのだった。
悪戯は、ハルにとって「自分らしさ」といっても過言ではなかったのだ。
小梅は笑って言った。
「怒ってないよ。だって、楽しかったもん!」
「え?」
「もっと遊ぼ!今度は、私がびっくりさせる番!」
ハルは目を丸くした。
「……ほんとに?怒ってないの?」
「うん。すっごく面白い!あと、君が付けてる烏さんみたいなお面とかも、全部!」
その言葉に、ハルの羽がふわっと揺れた。
「じゃあ……次はもっとすごい悪戯、考えとくね!」
「楽しみ!ね、君の名前は?」
「ハルだよ。よろしく、小梅」
その夜、屋根の上でハルはくすくす笑っていた。
「人間って、こんなに面白かったっけ?」
こうして、ハルも小梅の友達になった。悪戯は続き、笑い声は増えていった。
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