積もって転がって、集めて投げ出して。


 

 凍える冬に、雪が来た。

 

 雪はやがて土に積もり、白銀の大地へと変えた。

 

 次第に子供たちが集まった。集まった彼らは雪だるまを作ろうと考えた。

 

 おして、かためて、ゆきのたま。

 

 だれかがひょいっと、なげだした。

 

 そうすると、ぱつん、と柔らかな音がして、誰かの背中に当たった。

 

 やり返しとばかりに、その子も雪玉を投げ始めた。

 

 次第にそれは雪合戦となり、彼らは本来の目的も忘れて投げあった。

 

 けれども一人はしっかりと、固めた雪を転がしていった。

  

 しかし誰かの気まぐれでその雪玉は壊されてしまった。

 

 悪意なんてものはなかった。ただ遊びに夢中になっていただけなのだ。

 

 しばらくして一人の女子が指揮を取るようにして雪だるま作りを始めた。

 

 手押しで転がしながら子供たちは自分の腰と同じくらいの高さの雪玉を作り上げた。

 

 沢山の雪玉は混ざり合って一つの大きな塊になった。

 

 それが二つ。大きいのと小さいの一つずつ。

 

 そのうちの小さい方を転がしてもう一個の方に乗せようとした。

 

 とはいえ小さい方だって子供たちの肩ほどあった。簡単には持ち上げられなかった。

 

 よろめきながら、右往左往。持ち上げようにもチームワークが必要だった。

 

 悪戦苦闘でついに頭が乗っかった。けれどもなんだか様子が変だった。

 

 長いこと転がし続けていたせいで、雪玉はいつしか大きさが逆転してしまったのだった。

 

 仕方がないので、頭を下に描いて逆さ雪だるまとすることにした。

 

 不恰好な雪だるまを囲んで、子供たちははしゃぐ。


 気付けばもう外は真っ暗になっていた。

 

 疲れた子供たちは雪原に大の字になって寝転がった。

 

 空は澄んで、オリオン座が見える。

 

 沢山遊んで疲れたけれど、楽しかったです。

 

 そんな声がどこまでも響き渡るようだった。

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<短編集> 十の豆を口にする喜び 宇喜杉 ともこ @Ukisugi_Tomoko

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