どうして♯12から始まるの? と思ったら、前作があった。
前作は公式さんからのレビュー✨をもらっている。引き続き、こちらも良作である。
地域密着型のメガネ屋さん、勤務歴一年弱ときいて、想いうかべる生真面目で実直な感じ。
ご性格のあらわれた誠実な文章。
接客業は日々、勝手に向こうからネタが飛び込んでくる。
冒頭をみても、だいたいは、客が店に現れる場面から始まる。
メガネ屋なので、訪れる客はメガネを選ぶ。
どんな人がどんな品を選ぶのか。
ネタに困らないその美味しいポジションにいても、そのネタを上手にヨミモノに出来るかどうかは、書き手の手腕によるのだ。
いいなとおもったのは、「語り過ぎない」という点だ。
もちろん、書き手として瞬時に客のことは観察している。
好悪感情もある。
しかし事細かに、過剰に入り込み、調べ上げ、あーだこーだ無駄に描写したりしない。
そこは店員だからだ。
ホテルマンのような、見てるけど見てません、接客はしますが過度に関わりませんという、しらーっとした態度。
それが分かるように書いていることで、読み手は「え、店員さんってこんなことを考えていたの」「裏ではこんなことをやってたの」そんな不安や羞恥に襲われなくてすむ。書かれていることは、「誰でもそう感じるよね」という程度にとどめてあるのだ。
カタコトの外国人も、警察官も来る。
大袈裟な表現を排除して、短くまとめてあり、実に感じがよい。
万人受けするエッセイである。
来店する多彩な人々に対して、びっくりしたり呆れながらも、一線をひいて対処しているのが実に好ましい。
こういう木綿豆腐のようなエッセイはさらりと味わいがよく、何かの雑誌の隅っこに連載されるのに丁度いい。
とても良いので、それだけに、なぜカクヨムコンに合わせて出さなかったのだ、とは云いたい(笑)