第2話 高校生
それぞれ新入生たちは夢と希望が詰まった教室に足を運んでいく。期待。希望。
新しい青春を胸に。
ただ一人。傑だけは希望も夢もなく足を運んだのだ。
一年一組と書かれたネームプレートの前に立ち息を吐いた。今日から始まる高校生活にワクワクをしていないわけではない。
楽しみでもあるし、いろんな人と仲良くしたいと思ってもいる。だけど、どうにもこうにも嫌な予感がして生きた心地がしないんだ。
そこで不意に誰かの声が傑の耳を突く。
「あの、そこ退いてもらえませんか? 邪魔なんですけど」
鋭くも優しい声色。その声に気付いた傑は視線を向ける。
「ああ、すいません」
黒く長髪な髪を垂らしている彼女は傑を睨んだ。
「あんた、顔死んでいるけど大丈夫?」
「ああ。大丈夫。ごめん」
「私はいつ謝ってと言ったのかしら? 体調を心配しているんだけなんだけど?」
高圧的とでも言える態度と思えるような言葉は、声色にやって緩和されていく。
今俺の目の前に居る彼女は少なからず悪気はないのだろう。そもそも、俺がここに立っているのが悪かったんだ。
小さなため息を吐き、顔を上げる。
「全然大丈夫!」
空元気8割を出し、何とか声を乗せる。バレないように、いつものように。こうすれば誰とでも仲良くなれるから。
傑にとって現状の環境は辛いくもあった。当たり障りもない冗談に悪口は深く心に傷を残したのだ。
しかし何よりもショックであったのは傑だけには壁があるということ。
傑の抜いた5人グループができていることだ。
教室に入り自分の席に座る。
教室の奥底で端の席は妙に心地がよい。だが、隣が問題でもある。
「やっほー!」
横に座っている――夏帆は笑みを零しながら手を振ってくる。天使であるかのようなその仕草はクラスに居る男子を魅了させた。魅かれるような悪魔のような仕草。
そんな仕草を傑は無視をし窓に視線を寄せる。
「あんたっていつからツンデレになったのかしらね?」
夏帆はため息を吐き黒板に視線を戻した。
緊張を匂わしていた教室に新しい先生が入ってくる。ドアを開け、一礼をし足を入れた。
先生は周りを見渡し、笑みを零すことなどは、なくただ真っすぐな瞳で生徒たちを見つめた。
「日下部日向だ。今日からこのクラスの先生だ。よろしく」
短くも完璧に近い挨拶をした日向先生は小さな笑みを溢し表情を元に戻した。
日向先生か。優しそうではあるし当たりの分類ではあるかな。
外見的にも内面的にも当たりだな。傑は思考を巡らせつつも冷静にこの状況を処理していく。
一つずつ解決していこう。
ゆっくり解決していけばきっと今の環境から抜けることだってできるはずだ。
「さて、今から紙を配る。そこに自己紹介、ではなくお前らの罪を書け」
日向先生は目の色を変えることもない。笑みを溢すことも。
真剣な瞳で真っ直ぐな声でそう告げた。
そして僕たちは底辺に落ちる @sink2525
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