そのクエスト、おかしいです。
ジョン
プロローグ
どうしてこうなってしまったのかと、青年はしみじみ思う。青年が生まれてから早二十数年。農家として一人暮らしを始めて七年。今日も田畑を耕していた時に、その少女はやってきた。
宝石のついた杖に黒いローブと、誰が見ても魔法使いと分かる格好だ。その少女と出会ってからというもの、青年の静かな暮らしは一変した。
「ねぇー! “リト”さん、助けてよぉーー!」
青空の下、のどかな草原に囲まれた畑から少女の声が響く。その眼の端からは涙が滝のように流れていた。
しかし、少女の涙に、青年は鬱陶しげに目を向ける。初めは少女の涙に心配もしていたが、今ではもう同情のかけらもない。
少女が青年の家に来るときは、いつもこうだ。青年は鍬を土に突き立て嘆息をもらす。
「いい加減にしてください、“アルファ”さん。ここはギルドの酒場でもなければ教会でもないんですよ」
「だってぇ、私だけじゃクエスト達成できないんだもん! 何かアイデアちょうだい!」
「魔法使いが何言ってるんですか。僕はただの農家ですよ。そういう情報は同じ冒険者の誰かに聞いてください」
「やーだーー!」
まるで子供のように泣きじゃくる少女に、青年は顔をしかめた。
「この際、農家でも遊び人でも良いんです! 助けてぇ!」
「生憎ですが、お帰りください」
「うわーーん!」
少女はさらに大泣きし、青年はまた大きなため息をつく。
この二人のやり取りがはじまったのは、およそ一か月前にさかのぼる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます