青龍とお話し。

翌日、室の入り口には不満げな表情をした朱桜が立っていた。

雪華に結界を張ってもらっている為、強行突破で結界を破らずじっと私の許可が降りるのを待っているのだろう。

雪華に結界を解いてもらって、朱桜を招き入れる。

褥の近くに腰を下ろした朱桜に視線を合わせる。


「おはよう、朱桜。」

「おはよう、皐月。」

「雪華ありがとう。ゆっくり休んで。」


雪華にお礼を伝えれば、笑って若菜様のお手伝いに行くと言ってお台所へ向かった。

朱桜の不満げな表情の原因はなんだろうかと考えるが、琥珀と出かけたから俺も。とか、雪華だけしか近づけない様にした事か。


「皐月、あのおバカは青龍の雷が落ちて、しばらく神界に謹慎処分になった。だから皐月が喚ぶまではこちらに来れない。あれは傍にいた俺も怖かった・・・・。」

「そんなに・・?」

「基本的に、皐月に関して青龍は独占欲が強い。皐月の旦那だし。」

「・・・・うん?どういうこと?」


朱桜の発言に、初めて聞く言葉があった。

それを聞き返したら、朱桜も失言した、という表情をしている。

つまり、神将達の中での暗黙のルールというか、そんな認識をされているらしい。


「皐月、青龍が自分で話すだろうから、それまで秘密に・・・・・。」

「は、無理じゃないかな、朱桜?」


朱桜の後ろを指差すと、直立不動の青龍が立っていた。


「隠すような内容だったの?この人が旦那様候補ですって言われて好きになるなら、現世の婚約者にだってきっと会えばときめいたり、ドキドキしたりするのだろうし。私的にはそれはちょっと違う気がするのよ。あぁ、そうですか。とは思っても、好きになるかは別問題でしょう?そもそも、なぜ、青龍が私の旦那さんなのかを説明して欲しいのだけれど。」

「いや、隠していた訳ではなくひぃ様が成人して色々落ち着いたら話そうっていうのが、我々の考えだったわけで。」


なるほどね。

神将達なりに配慮をしていたという事なのだろう。

旦那って言い切ったって事はある意味決定事項なのだろう。でも、私も私で次代を残さないといけない。

となるとどうなるのか、詳しくその考えを聞いてみないと分からないし。

ん~と少し悩んでみたが、先に朱桜の要件を聞こう。


「分かった。とにかくその件に関しては、青龍、後程説明してね。それと朱桜は琥珀の件以外に何か私に用事があったのじゃない?」

「あぁ、これを晴明から預かった。元々は帝からの預かりものらしい。皐月の気分転換に使ってほしいって事だったから俺が預かってきた。誰と行く?」

「ちょうどいいから、青龍と行く。朱桜は申し訳ないけど、先日の件をもう少し調べてもらってもいい?」

「分かった。それじゃあ、俺は傍を離れるけど、何かあれば喚んでくれ。」

「もちろん。」


しっかりと返事をすれば朱桜は姿を消した。

残ったのは、相変わらず固まっている青龍だけだ。

そんなに私のバレたのが嫌だったのか、はたまた恥ずかしいのか?どうにかはわからないけれども、ひとまず背の高い青龍には是非とも座ってもらいたい。

見上げるも首が痛くなるしね。


「青龍。」

「・・・・は、はい。」

「ちょっと、座ってくれる?見上げるのも大変だし。」


そうお願いをすれば、素直に先ほどまで朱桜が座っていた場所に腰を下ろしてくれた。

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