琥珀とお出かけ。
翌日、朝のお仕事を一通り終え、朝餉を食べ若菜さまのお手伝いを終えた私は、壷装束に着替えていた。
昨日の約束通り今日は琥珀と一緒にお出かけをするためだ。
どうせなら西側のエリアをある程度見ておきたいし、干し桃もほしいな~。
ちょっと遠いけど、琥珀と一緒ならある程度周りたい所は全部いけるだろう。
伏見稲荷大社は、朱桜と一緒に行こう。あそこは南エリアにあるからね。
先日晴明さまからお給金をいただいたので、何かいいものがあれば買う予定だ。
一応青にぃと雪華に聞いていくらくらい手元にあれば大丈夫か確認をして、残りは全て若菜さまに渡した。
食費とかにぜひ使っていただきたいとお願いしたら一度断られたが、そこはゴリ押しをした。
「皐月、お待たせ。ちょっと手こずった。」
とやってきた琥珀の色彩はいつもと違い、髪も瞳も黒になっていた。
「見慣れない色だね。ちょっと驚いた。」
「一緒に外を歩くからね。異国の色だとゆっくり見て回れないから。」
「ありがとう。私、市に行けたらあとは琥珀の行きたいところに行こう。全体的に西のエリアを確認しておきたい。というのもあるけれど。」
「あー、なら笠がいるな。」
琥珀の言葉に素直にうなずけば、玄武姉ーと言いながら屋敷の奥へと戻っていった。
そしてすぐに戻ってきた琥珀の手には、白い布地が付いた笠を持っていた。
近衛にいったら被ったらいいと言われ、そのまま琥珀の片腕に抱き上げられるとそのまま姿を見えないようにして、屋根伝いに移動をし、まずは市を目指した。
安倍邸から市まで少し距離があるが、琥珀がかけてくれればあっという間に到着する。
屋根からみる西エリアの風景は、内裏とは少し違うような気がした。
琥珀が向かっているからか、少し空気が綺麗になったような気がした。
西市近くの人気のない路地に降りて、笠を被り琥珀と手を繋いで歩く。
今日は武官姿なので、お供の者のつもりなのだろうが、周りからはどう見られているのかわからない。
わからないけれど、ただ一つ言えるのは確実に女性陣が振り向いているという事。
囲まれなければいいのだけど。
と言いながら、西市を見て回る。
「何を見たいのです?」
「干し桃がほしいの。」
「干し桃ですね。探してみましょうか。」
市の中を歩いて回れば店先に立つ女性達に、声をかけられる。
うん、予想通りだな~。なんて、その光景を眺めながら私は目的のモノを探す。
離れる訳ではなく、手はしっかりと繋いだままお店の人たちと話す琥珀は楽しそうだなと、隣から見ていた。
元々琥珀は社交的で、よく周りに人だかりができていたことを思い出す。
もう少し自由に動き回ってもらってもいいのだけれどな。
と思うのは、本音なのだが私の周りにいる神将達は基本的に私から離れることを嫌う。
理由はわからないけれど、私が本気で嫌がらなければ離れるという選択肢はないというくらいにべったりだ。
おかげで親族から嫌味を言われたところで寂しい思いはしなかったし、私の代わりに言い返していたので傷つくということもなかった。
4人とも私が生まれた頃から一緒にいるので、距離を取られたところで逆に私が寂しいと思う。
「姫さま、こちらの桃はいかがでしょうか?」
思考の海に浸かっていると、琥珀から声をかけられた。
見せられたのは綺麗な干し桃。
とてもいい状態だ。
店先を見れば他にもいくつかいい状態の干し桃がある。
「こちらと、あれとあそこの二つ。まとめて頂戴。」
「かしこまりました。」
笑みを浮かべた琥珀はそのまま店主に代金を払い、私が指定した干し桃を買ってきてくれた。
周りの視線が気になるところだけど、気にせず散策を続けることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます