目覚めと、自覚と、狙う者
体調不良
もうすぐ宮中で五節の舞があるらしい。
毎年秋にある五穀豊穣に感謝し祈るお祭りで宴が催される。
生で見る五節の舞に実は、ワクワクしている。
貴族の未婚の子女が4人で舞う舞は華やかで美しいし、舞が好きな私にとって今1番楽しみにしている行事だ。
当日は春宮さまの傍で見ることになるだろうから、舞台がよく見えるだろう。
「楽しみですね。」
「時平も舞えるのか?」
「何がです?」
「五節の舞。」
「舞えますよ?祖父にこういう神事に関わる舞から陰陽道に関わる舞まで、全て叩き込まれましたから。」
当然と言った表情で告げると、意外そうな表情をされた。
最近執務の休憩中にこのように、春宮さまと雑談をするようになった。
基本的に青にぃ達は呼ばない限り姿を現さないので側から見れば2人で喋っているように見えるだろうが、誰かしら1人は私のそばに必ず居る。
最近は、青にぃが多いのだけど少し不機嫌というか、ちょっと様子がおかしい。
青にぃを気にしながらも、会話は舞の話だ。
舞は三兄弟全員同じ舞が同じレベルで舞うことができる。
女性が舞うような舞でも全部。
兄様達が舞えなくて、私が舞えるモノだってあるのだ。
雪華にも猛練習に付き合ってもらって習得したので、偏りがなくオールラウンダーです。
「春宮さま、私はそろそろ午後の見回りに・・・・・。」
そう言って立ち上がれば、立ちくらみを起こしたように身体から力が抜ける。
私の身体を支えたのは、傍に控えていた青にぃだった。
「主、力を少し放出しよう。力を塞き止めておくのもこれ以上は危険だ。」
「・・・・・・ぅ。・・・・・りゅ・・・?」
青にぃに抱き上げられる。
されるがまま視線を動かせば、少し不機嫌そうな表情をした春宮さまの姿が目に入った。
同様に青にぃも超絶不機嫌である。
〈玄武。晴明に説明を。〉
〈だから言ったじゃろう?強制的にでも早めに離脱をさせねばならぬと。〉
〈・・・・。〉
〈お主は昔から、姫さまのお願いには弱いからのう。まぁ、説明は妾に任せよ。そろそろ姫さまにも説明が必要かと思うぞ?〉
〈ひぃさまには目を覚ましてから、俺から話す。〉
〈それがよかろうて。朱雀、着いておいで。白虎、青龍と共に姫さまと共に帰宅を。〉
玄武の言葉に、朱雀と白虎は従い、玄武と朱雀は帝の元へ、青龍と白虎は安倍邸へ向かった。
神というものは気まぐれで、主人がいても基本的に己の自由に動く。
だが、時平と一緒にいる4人は私が知っている神将達とは少し違い主人である少女の傍を離れたがらない。
少女自身もこちらへ来た時よりも、霊力が倍近く大きくなっている。
今日は珍しく陰陽寮にて、息子達の話を聞いていたら突如姿を現したのは、玄武殿と朱雀殿だった。
「晴明、少し良いかの?」
「これはこれは、何かありましたかな?」
「うむ。時平の件じゃ。同胞が何も説明なしに安倍邸に連れ帰ったのでな、晴明から説明をしてもらおうと、妾が来たのじゃ。」
「時平をですか?」
「そうじゃ。時平は今己の霊力と神力が器に収まりきれず、器から溢れることもできず、先ほど限界を迎えた。あれ以上は命に関わることでの、同胞が強制的に安倍邸に連れ帰ったのじゃ。」
「屋敷にですか?」
「あそこは、土地そのものが霊力も神力も欲する場所だからな。主人には
「もともと、器から溢れていた分の霊力しか使えておらぬ状態だったが、今は限界まで力を難なく使用することができる。本来の力を取り戻し、使えるようになったのは幸いだがのう。他のものが幼少期から自然に行っている力を抜くという事に関しては苦手でのう。うまく逃す方法を覚えねばならぬのだが、本人が帰りたがらなかった主人もある意味悪いのだがな。」
「ある程度俺たちが、主人が寝ている間に分けてもらっていたが、力の回復が他の者達よりも早い。」
「つまり、自身の力で自分を命の危険にさらしているということでしょうか?」
「そうじゃ。」
「なので、その辺りの説明をよろしくお願いいたします。」
「わかりました。すぐに主上にお話しさせていただきます。」
「あの小童にも説明してやってくれ。何も言わず連れ帰ったからのう。」
「小童・・・・?あぁ、かしこまりました。」
「では、よろしく頼む。」
用件だけ伝えると、玄武と朱雀は姿を消した。
さてあの2人の姿を捉えられた者はこの陰陽寮にいるのか?
と思いながらも、事情を伝えるべく主上へ文を出した。
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