3
「時平、再び住めるようになるのにどのくらい期間がかかる?」
「2、3日くらいかと。そこまで酷いものじゃありませんし。」
「そうか、ならば登花殿へ移るようにと。」
「遠くありませんか?」
「1日くらいなら隣の殿舎だったのだがな。」
「皆さまこのまま物忌みになりますからね。それを考慮するといいのかもしれません。」
ふーん。と内心思いながら周りの女房たちを見渡す。
倒れた朝霧サン以外は問題なさそうだ。
「玄武。」
「ここに。」
「この藤壺と梅壺の清めが終わるまで更衣さま方の護衛を頼めるか?何かあれば呼んで欲しい。」
「仰せのままに。」
「あぁ、頼りにしているよ。さて春宮さまあとは外の護衛を頼めますか?」
「それは主上がすでに手配済みだ。あと時平を呼んでいる。今すぐ清涼殿に来るようにと。」
「さすがですね。まずは、ここの方々に説明してください。主上の元へは急ぎますが、血だけは落としていきますよ。」
「主、俺が連れていくよ。」
廂の下から顔を覗かせた琥珀に苦笑しながら頷くと、あとの事は春宮さまにお願いして清涼殿へ向かうことにした。
青にぃに粗方血を落としてもらって、私は清涼殿の内部へと案内された。
迎えに来てくれた人は少し驚いていたけれど。
「安倍時平、お呼びという事で馳せ参じました。」
「時平、まずは大義であった。よくぞ春宮、更衣、女御を守ってくれた。」
「ありがとうございます。」
「さて、この場には私と晴明、時平しか居らぬ。詳しく申せ。」
「原因は解決致しましたが、元凶はまだです。」
「というと?」
「恐らく、我が一族と同等の力を持った者が関わっているかと。」
そう伝えると何か思うところがあるのだろう、晴明さまが考え込まれていた。
「主上、御用は以上でしょうか?」
「天皇としては。ここからは娘をもつ父親からの意見だが、未婚の娘が体に傷を作るのは見過ごせぬ。傷が残ったらどうする?嫁の貰い手が減るではないか。」
「主上、一応お伝えしておきます。私にも親が決めた婚約者候補と婚約者筆頭の相手なら居りますよ?そしていうことが、父様みたいです。」
どの時代も父親というものはどこも同じだろうか?
〈皐月、俺は嫌だからな?あの親王だろ?筆頭の婚約者候補って〉
〈親王さまだろうと他の候補者だろうと、私はまだあった事ないからよく知らないのよ。〉
不満をこぼす琥珀に苦笑をする。
「ひとまず私は身を清めに戻ってよろしいでしょうか?」
「時平殿の婚約者は皇族なのか?」
「え?あぁ、多いですよ?従兄弟婚なんて。父様と母さまはハトコ同士ですが、皇室の婚姻相手の第一候補は我が家ですから。いつからそうなのかは、存じませぬが。」
「そうか。それでは引き続き頼む。」
「かしこまりました。御前失礼いたします。」
そう伝え、清涼殿を辞すると梅壺に戻った。
梅壺へ戻ると春宮さまからの説明は終わっており、なぜか私は好奇の目にさらされた。何故??
皆が移動してもしなくてもどちらでも構わないので、舞えるスペースを確保すると簡易の祓いの舞を舞い始める。
一度全体を完全にキレイにした後なので、簡単に空間をきれいにすることができた。
琥珀に鈴を出してもらうと軽やかに祓の舞を終わらせれば、拍手喝采だった。
うん、みんないい表情だね。大丈夫そうだ。
にっこり笑みを浮かべると、頬を染められた。今のどこにトキメキポイントあるの?
首を傾げながらも、春宮さまの元へ行き報告をすればありがとうと言われ頭を撫でられた時に、周りがざわついたのは言うまでもない。
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