咎禍
Yuta
第1話 「アコンシャス」
2000年前、アコンシャスという異型の生物が存在した。
しかし人間とアコンシャスは決別し、戦争に発展。勝者は人間だった。
今ではアコンシャスはほぼ壊滅状態、残党はSRという組織が監視している。
そんな時代に生きる。禍いを背負うことになる一人の青年がいた。
彼の名は『天城譲介』
______________________________________________
咎禍(とがか)第一話 「アコンシャス」
部屋の中に目覚ましの音が鳴り響く。
譲介はその目覚ましを止め、眠い目をこすりながら起き上がった。
時刻は7:00。学校へ向かう時間。
焦げ目がついた食パンを平らげると譲介は学校へ向かう。
学校へ行く途中、親子が目に入る。
「お母さん!カブトムシとれた〜!」
「コラ。自然にかえしてあげなさい。」
ふと譲介の脳裏に幼い記憶が蘇る。
「譲介。起きなさい。学校よ。」
「うん!すぐ行く!」
それは亡き母・天城真由美との日々だ。
幼い頃に事故で父親を失った譲介は真由美に女手ひとつで育てられていた。
だが忘れたことはないあの日、真由美は黒尽くめの男にさらわれる。
薄暗い部屋の中、真由美は黒尽くめの男に腕を掴まれる。
「譲介…!」
「ママァァァア!」
それを最後に真由美は行方が分からなくなった。
譲介は頬を軽くたたき、呟く。
「…あれは仕方なかったんだ。今は学校に行くことに集中しろ。」
そして坂を降りていく。
静寂が走った…その静寂は嵐の前の静けさとも知らずに
激しくアラームが鳴り響く。
譲介は「なんだ!?」と思いふりかえる。
騒ぐ市民たちの中、目に入ったのはテレビのモニターに映るニュースキャスターの姿。
台本を片手に汗をにじませていた。
「速報です!アコンシャスが日本を侵攻しに来ました!」
『アコンシャス』
その言葉を聞いた世界中の背筋が凍る。
脳裏に宿るのは中学や高校での社会の授業。
2000年前に人間と共存していた異型・アコンシャス。
人間型と怪人型の2つの種類がある。
死ぬ時に人間型は消滅し、怪人型はカードになるという奇妙な生物。
更に非常に寿命がながく、人間に擬態する能力も持ち合わせる。
「SRはどうした!?」
市民はそう叫ぶ。
ニュースキャスターは続ける。
「あまりの量にSRも対応が間に合っていません…。皆さんすぐに避難してください!」
そういうとモニターは避難を呼びかける表示に変わった。
もうすでに凄まじい剣幕で市民達は駆け出していた。
「逃げろー!」
それをみた譲介も駆け出す。
(SRが対応に追いついてない…?どういうことだ…異常事態すぎる!とにかく逃げないと死ぬ!1秒の遅れが死につながる!)
譲介はとにかく走った。
…どれくらいたっただろうか、譲介はある路地を横切ろうとした。
だが足を止める。
そう目に入ったのは路地でアコンシャスに襲われる少年の姿だ。
譲介の思考が凄まじい速度で回転する。
(どうする…助けるか…?…!?。何言ってるんだ!!俺なんかが助けられるわない!)
そんなことを考えているうちにアコンシャスが少年に近寄っていく。
「ニンゲン…ニンゲン…」
少年の瞳に涙が浮かぶ。
「ママァァ〜!パパァ〜!」
アコンシャスが少年になぐりかかる。
「シネェ〜!」
その拳は鈍い音を響かせながら、食らいつく。
だが…それが食らいついたのは…
少年ではなく譲介だった。
「君!早く逃げて!」
譲介がそういうと少年は
「うん…!」
と返事をしながら、駆け出した。
アコンシャスは嘲笑う。
「お前バカだなぁ。死なせてやるよ!」
「フッ…確かにバカかもな…。何やってんだ俺は…」
譲介は考えより先に体が動いていた。その理由は彼が8歳の頃まで遡る。
譲介は真由美と共に出かけていたところ、アコンシャスに襲われる。
死を悟った二人…だがそこにある男が現れる。
槍を持った大きな背中。
「少年と女性!早く逃げろ!」
誰かはわからない。だが彼に助けられてから、譲介は人の命を救うことを望んでいた。
それがかなった…譲介の胸に後悔はなかった。
「フッ…俺もここで終わりか…」
終わりを悟った…何故だか恐怖はなかった。
だがそのとき…脳に直接声が響く。
「小僧…気に入った…俺からの贈り物だ…。使え。」
「えっ?」
そのとき、譲介の体に紅の炎が巻きつく!
「うわぁぁぁあ!」
譲介はやけしぬ…そう思った。
だが譲介の体には傷一つなかった。
そして腰には謎のベルトが巻かれていた。カードもあった。
「なんだ…これ…?」
「教えてやろう…それは変身する力だ。貴様に使えるかな…?」
脳にまたもや声が響く。
(さっきから…テレパシーのようなこの声はなんだ…?いやそれはいい…とにかく使うしか…)
だがその時、譲介の体が震え、止まる。
「あっ…」
(だめだ…怖い…)
なんの訓練もしていない譲介からすれば戦うということは重すぎた。
アコンシャスは嘲笑う。
「どうした?変身しないのかぁ?愚かな。ならばてめぇからぶっ殺してやらぁ!」
アコンシャスは向かってくる。
(まずい…早く変身しないと…!)
そしてやつの鉄拳が譲介を捉える。
「ぐぁあ!」
譲介は激しく吹き飛び、その場に倒れ込む。
「終わりだなガキ。死にやがれぇ!」
そのとき、譲介の脳裏に宿ったのは施設や学校での出会い。
「天城。こっち来て飯食えよ!」
譲介はいつも一人だったが、話しかけてくれるクラスメイトがいた。
更に施設の人も懸命に世話してくれていた。
「譲介。飯ちゃんと食えてるか?」
「はい。一応。」
そのとき、拳を握りしめ、歯を食いしばりながら、譲介は立ち上がる。
「俺に優しくしてくれた人たちはたくさんいる…。この街の人は優しい…温かい…。その人たちを傷つけるやつは許さない…!」
そのとき、譲介の中のおそれは完全に心の炎に焼き尽くされていた。
そしてベルトにカードをセットする。
「SET!PHOENIX!」
あたりの空気が燃え盛る…そして譲介は腹の底から決意の叫びを上げる。
「変身…!」
その一言は譲介の全存在をかけた言葉だった。
トリガーがひくと紅蓮の炎が譲介を包み、ベルトが唸る。
「Ignite. Ascend. Reborn.」
「……燃えろ。俺の命(いのち)よ――!」
「Phoenix Drive — BURN THE SKY!!」
炎に包まれ、不死鳥の模様が刻まれた、紅の戦士。
槍を片手にまっすぐと向き合う姿は立派な戦士だった。
アコンシャスは飛び込む。
「関係ねぇだろぉ!」
「いくぞ…!」
アコンシャスの拳が放たれるも、譲介はそれを槍で防ぐ。
そしてそのまま譲介の蹴りがアコンシャスを捉えた。
「なんだ…動きがちげぇ…」
「俺はもう…恐れない…恐怖は炎が燃やし尽くしたからだ!」
「うるせぇガキだぁ!」
アコンシャスが拳を放つ。
「これで決める…母さん…みんな…力を貸してくれ…!」
「FIRE CHARGE!」
「ハァーッ!」
「BURNING STRIKE!」
二人の必殺技が絡み合い、互いを白煙が包む。
だが次の瞬間、アコンシャスは切り裂かれていた。
「ば、バカなぁぁぁ!」
そして炎に包まれながら、アコンシャスは死んだ。
「ハァハァ…やった…のか…?」
譲介は息を切らしながら、膝をつく。
だが影はすぐそこまで迫っていた。
「おい。あのガキ走る体力もなさそうだ。」
「運が良いねぇ…俺たち。」
アコンシャスが2匹…譲介に向かって歩み寄る。
「嘘…だろ…?」
譲介は考える。
(どうする…逃げるか…?たたかうか…?いやそんな体力はもう残ってない…初めての戦闘だったせいか…息が続かない…!)
もう譲介になすすべはない。
「ガキぃ。遺言は聞いてやるよぉ。」
アコンシャス達が詰め寄ってくる。
だが現場に声が響く。
「そこまでだ。」
アコンシャスが振り向く。
「あ?」
譲介の後ろから現るのは刀を持った男。
「貴様らの愚行もここで俺が断ち切る。」
「なめてんじゃねぇぞ。ぶっ殺してやらぁ!」
アコンシャスが二匹、彼に突っ込んでいく。
だがその男は動きが違った。
「甘い。」
一瞬にしてアコンシャス達を両断する。
金属がこすれる音を鳴らしながら、男は刀をしまう。
「少年よ。ここは危険だ。すぐに離れるぞ。立てるか?」
「…はい!」
譲介はそう返事をすると男の手を借りながら、立ち上がった。
向かった先は一隻の船。
(とりあえず…終わったのか…)
譲介は安堵した。
「お前、名はなんという?」
男の問いかけに譲介は「天城譲介です!」と答えた。
「そうか。俺は遊馬慧悟だ。SRという組織に所属している。
…一つ聞きたい。俺が到着した時、アコンシャスの死体が一つあった。まさかとは思うがあれはお前がやったのか?」
譲介は嘘を付くわけにはいかないと思い。正直に答えた。
「…はい俺です。」
男は目を見開く。
「どういうからくりだ。なぜ何も訓練していないお前がアコンシャスを倒せた?」
譲介は説明した。
逃げていたところ、少年を庇って、負傷。
死を覚悟したが、ベルトが突然現れ、変身することになった。
そしてその時、テレパシーのような声が聞こえたということ。
「にわかには信じがたい。お前は危険だ。田蔵さんの元までついてきてもらうぞ。」
「田蔵さん?」
「SRの武闘派トップだ。俺の命の恩人だよ。」
そんなことを話していた時、船が突如止まる。
「何…?運転手。大丈夫か?」
その時、運転手と副運転手が二人の前へと現れる。
「遊馬さん。コレが見えますか?」
「それは…!?貴様…!」
それを見た遊馬は刀を抜く。
それはアコンシャスが人間に擬態するときに使うミメシスドライバーとリバーサルキーだ。
「あれは…アコンシャスの…!」
それを見た俺も身構える。
「天城。隠れておけ。ここはおれがやる。」
譲介は考える。
(これはプロの世界だ…。俺みたいな素人がでてきても…遊馬さんの足を引っ張るだけだ…!)
そして譲介は「はい!」と返事しながら、船の影へと隠れる。
運転手・山本と副運転手・田中はリバーサルキーを抜く。
「お前達もろとも。」
「あの世へ送ってやろう。」
そして禍々しい怪人の姿へと変化した。
そしてついに遊馬とアコンシャス二人が向き合う。
「かかってこい…この遊馬慧悟が切り捨てる。」
このたたかいの行く末は…
次回 「青嵐の長ドス」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます