断罪の剣聖~最強の剣聖が最強になるまでの苦難に満ち溢れたモノガタリ〜

異世界人(願望)

第1章 少年〜青年編

奴隷期

第1話 絶望から始まる物語

 side:神の視点

 戦場を駆ける1人の男がいた名をアシュ・アークレインという。彼はエルド王国を帝国やドラゴンの脅威から幾度となくこの国を救い、味方には断罪の剣聖、敵から剣の悪魔と呼ばれた。

 

神威カムイ

 

 アシュが剣を振ると、大地は裂け、世界は割れる


 彼の一振りの前には、どのような魔法も存在も無意味


 まさに史上最強の剣士である

 

 戦の終わった夕暮れ、血と煙の匂いがまだ漂う野営地に、若い声が響いた。


「師匠! 戦争お疲れ様です」

「ロンドか、どうだ? 稽古の調子は」


「順調です」

「そうか、それはよかった」


「そういえば師匠は、どうやって剣聖とと呼ばれる様になったんですか?」

 弟子はそう彼の師である、アシュへ訪ねた

 

「ふむ……ワシの過去を知っているものはもうほとんど死んでしまってるからな。あいつに聞けばいい気もするが。まあいい、聞きたいのか? 生半可な覚悟で聞くものじゃないぞ」

 アシュは優しく、重みのある声でいった

 

「それでもです」

 恐怖とそれに勝る決意の宿った強い眼差しでロンドは告げた

 

「……いいだろう」

 彼は、ロンドの決意が宿る声に負けそうつぶやいた


 しかし、彼の口はやわらかい笑みをうかべていた

 

「そうだな、どこから話すか、やはりワシが奴隷だったときからか」

「奴隷ですか! 師匠が!?」

 ロンドは目を丸くして見開いている

 

「そうだ、あれは今から50年以上前、ワシがまだ弱かった15の時の話だ……」

 ~~~

 今から50年以上前、

 語り手:アシュ・アークレイン

「ごめんねアシュ、こんなご飯しかなくて」

「いやいいんだよ母さん」

 

「ウルセェ! カスが! 俺たちゃ奴隷なんだから仕方ねぇだろ! そんなこと言ってんなら俺によこしな!」

「ああ、アシュの大事なご飯!」

「うるせぇ! うめぇな!」

 

「おい! うるさいぞ! お前ら! 特に母親! 労働力としても使えないんだから! 拷問部屋行きだ!」

 

「待って! お母さんはなにも悪く――」

「だまれガキ! 奴隷に悪いもクソもないんだよ!」

「へっ、騒ぐからああなるんだ」

 

 ――そんな、お母さんは何も悪くないっていのに、でも、でも耐えなきゃここで、ここで手を出したら、あの人たちに僕まで連れてかれてしまう、でもでも


「見苦しいな、お前たち」

「おや、この牢のボスのお出ましだ、おい、クソガキ、てめぇの母ちゃんは帰ってくるだろ、静かにしてな! さっきから、母ちゃん母ちゃんとうるせえんだよ! ボスは戦闘奴隷になるんだよ! 強い放出魔法だって使えるんだぜ!」


「その通りだ! 俺たち普通の奴隷とは全く違う、待遇がな! それにお前みたいな放出魔法が使えないガキとは天と地ほど差があるんだよ!」

 

 ――戦闘奴隷か

 

 とはいえ待遇も結局そこまで変わらない、でも少しご飯とかはおいしくなるか


 そしたらお母さんにもおいしいご飯が、僕が強くなれれば


「ふむ、そこの坊主、確か名前はアシュ。面白そうなやつだな。お前、強さに興味あるか?」

「ボスその餓鬼をスカウトするんですか!? てめぇボスに誘われるとは運はいいようだな!」

 

 ちょうどいい、強くなれるかもしれないのか。


「お願いします」

「ビビらない度胸。強くなり生き残ろうとする必死な目、やはりいい目だ。お前は今日から俺の弟子だ」


 とっさの選択だった、でもこれがこれからの人生を大きく左右することになったんだ。


「お願いします!」


 ~~~

 

「アシュ、戻ってきたよ」

「お母さん!」


 お母さん、ボロボロになっている、いまにも消えてしまいそうな声だ

 

「ごめんね、心配させちゃって」

「大丈夫だよ! お母さんは何も悪くない」


 何も悪くないのに、どうしてそんなにボロボロにならなければいけないんだ!


 でも強くなれば、偉い人に重宝されて少しでもお母さんの生活がよくなる、絶対に、絶対に強くならないと

 

「……はげましてくれてありがとねぇ」

 お母さん、そんな悲しい目をしないで


 その顔を見て僕はどうしようもなく、くやしい気持ちになった


 ~~~


「1.2…………999、1000」

 上に岩を乗せながらの腕立て伏せ1000回終了

 

「ここにあるものだけで、そこまで筋肉をつけるとはな」



「いえ、師匠のおかげです」

 もう1年か、かなり強くなったな

 

 前は過酷な生活をするのにほとんど筋肉なんかなかったからな。

 戦闘奴隷になって順調に勝っていけてる師匠から少しご飯をもらえるようになってからは生きることだけでなく強くなることに体力を裂けるようになった。

 

 まあ、弟子になったから敬語も仕込まれたけど。それと文字の授業とかいうわけわかんないのも受けさせられた、何の役に立つというのだろう?

「そうだな。少し休むといい、この牢はそれなりに広いからお前の母も近くにいてもらったほうが嬉しいだろ」


「お気遣いありがとうございます! 師匠!」


 それでも師匠は母のことも気遣ってくれるいい人だった、

 だから僕は師匠のことをすごいと思う。だってみんな生きるのに必死な奴隷の中で他人に気配りをすることができるのだから、

 少なくとも僕には無理だ、ボスで戦闘奴隷だからというのもあるのかもしれないけど

 

 


 

「お母さん!」

「アシュ、おかえり」


「すぐそこだけどね」

「そうね、遠目にだけど見てたわよ、強くなってるのね」


「うん、それに強さだけじゃないよ文字とかも教えてもらったからね」

「それはよかったわ」


 お母さんに、食べ物の余りを分けれるようになったからガリッガリに痩せて骨も見えてきていたのが、少しはましになってきたな。


 それに、絡んできたやつも僕が師匠の弟子になってからチョッカイをかけてこなくなったし


 このまま戦闘奴隷となってコロシアムで勝ち進んでいけばお母さんを楽にできる。


 師匠から聞く戦闘奴隷としての仕事もコロシアムで戦い勝つだけ、強ければ大丈夫そうだ。


 明日から、僕は剣について教わることになってる、そうすれば……、きっとお母さんを幸せにできる。これまでの恩を返さなくちゃ。


 でも逃げることはできないな……お母さんは外に出たらもっとつらい思いをすると思う。だから僕は逃げずにお母さんを守らないと!


「じゃあご飯を食べよう」

「そうね」

 

 ~~~

 次の日

「明日は俺は強敵と戦うことになるんだ。だから、少し修行の時間に割かせて……ガハッ!」

「師匠!? 大丈夫?」


「大丈夫だ、今日受けた毒がな……生活には何の支障もないのだが……心配してくれてありがとう、まあそういうわけで今日はここで終わりだ」

「わかった!」

 大丈夫かな……師匠

 

 

「ただいま!」

「おかえり、軍人にわたされた分よ」

「ありがとう、これ師匠にもらったの」


「ありがとうね、じゃあご飯にしましょう」

「うん!」

 幸せだった、これからの人生も考えてもかなり幸せなほうだろう、でもこの幸せは思ったよりも脆くあっさりと崩れるものだった


 ~~~


 奴隷であると言うことを除けば、全てが順調に動いていたある日


 

 その順調は突然崩れ去った



「貴様の母は連れていかせてもらう! 二度と会うことはないだろう!」


「お母さんを!お母さんを返してくれ!」


「フハハハハハ! 無理に決まっている、この牢はあの戦闘奴隷がいたから少しは優遇されていたのだ。だが彼もさきほどコロシアムにて敗北した!」


 そんな……師匠も


 いや、でも! その前に!


「お母さんをはなせぇ!」


 僕は叫びながら力まかせに体を動かした、


「グハッ! 貴様!」


 殴った、なんだろう、体がスムーズに動く気がする。体に何かが回っているような……

 

 少しづつ視界が開けてきて、体が一気に熱くなった。その瞬間どうすれば殴れるかが、とこが急所か、分かるような気がした。


 体が少しずつ熱くなってくる

 

「ハァぁぁぁぁ!」

「ッ! 貴様~! 風魔法:ウインドカッター!」

 

 これは! 魔法!? 話には聞いていたけど……

 

 まずい!風の刃が!


「ッ――――――!」

「ハッハッハ! お前ら、家族には放出魔法は使えん! 勝ちだ! 私の勝ちだ!」

 

 目の前が……意識がもうろうとしてきた……

「ちょっと待て」

 

「上官!」

「そのものは戦闘奴隷とする、使えそうだ、それと母親は……わかってるな?」

 

「ええ、わかりました!」

「フフフ、君はもう2度と母親と会うことができないだろう……」

 ッ――――――!

 

「母さんを……はな……」

 

 体


 動け


 から、だ

 

「君は明日試合だ、相手は初めてにしては強いほうだ、果たして……勝てるかな? 実に、実に楽しみだよ」

 

 そう言い残し奴はいなくなった


 僕の視界は暗転していた



 ――――――――――――――――

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