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墓場のユウレイ

プロローグ

深夜二時。

 世界的に人気を誇るVRゲーム《CROSS WORLD》の掲示板は、異様な熱気に包まれていた。


 ――“見つけた奴いるか? 例の隠しステージ”

 ――“スクショ貼る。これ……本当に仕様か?”


 次々と投下される画像には、プレイヤーには馴染みのない廃墟のマップが映っていた。公式が発表していない、未公開のエリア。しかも、その壁面に刻まれた文字は、ただの落書きではなかった。


 《199X年、東京・**区 女子高生殺害事件》


 その場にいた誰もが、目を疑った。

 ゲーム内のグラフィックで再現された現場の風景。そして、実際の新聞記事と一致する日付と事件名。


 「……これ、マジかよ」

 配信者の声が震えていた。何千人ものリスナーが同時に息を呑む。


 数十年前、未解決のまま葬られた残酷な事件。その断片が、なぜか最新ゲームの“イースターエッグ”として埋め込まれている――。


 開発者の遊び心にしては、悪質すぎる。だが、ただのジョークにしては出来が精緻すぎた。被害者の家の間取り、現場に落ちていた品、警察も公表していない情報まで描き込まれている。


 やがてチャット欄に、ひときわ目立つ書き込みが流れる。


 ――“これを解いたら、犯人にたどり着ける”


 配信画面のコメントは炎上寸前。

 しかし、まだ誰も気づいていなかった。

 この奇妙なメッセージが、現実の未解決事件を再び動かし、ひと組の不器用な親子を渦中に巻き込むことになることを。


 そして彼らは、ゲームと現実を往復しながら、人の悪意と真実に挑むことになる。

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