第13話 雪解けの季節は暖かく
カフェの空気が一瞬で凍りついた。
「ちょ、ちょっと待って!辞めるってどういうこと!?」
「最初に申しましたでしょう?“一度きり”と。わたくしの気まぐれで付き合ったまで。約束は果たしました」
「そんな……」
「おいおい!ここからが根性の見せどころやろ!」
「根性だけで人は動きませんわ」瑠璃は肩をすくめた。
「ヤバ…せっかく9人揃ったのに…」さすがの
「……でも、瑠璃ちゃんの気持ちも分かるよ。失敗したもんね」
その場に重い沈黙が流れた。
だが
「確かに失敗したわ。でも、それで終わりにしたら、本当に“笑いもの”のままよ」
「……」瑠璃は結衣をじっと見つめる。
光が続けて立ち上がった。
「悔しいんだよ!私は!もっと上手くなって、もっとお客さんに笑顔になってほしいっちゃん!その為にも瑠璃がおらんとダメなんよ!」
「わたくしが……必要?」瑠璃の瞳が一瞬だけ揺れる。
「もちろん!」花が声を張る。
「ステージでの瑠璃、めっちゃ綺麗やったぞ!」煉佳も頷く。
「ウチの紫と、瑠璃のシルバー、並んだら最強やしね!」莉愛が笑う。
「アイドルは宇宙……9人で星座」
「日菜も静かに!」と結衣が反射的に突っ込んだが、瑠璃の表情は緩んでいた。
数秒の沈黙の後――。
「……まったく。あなたたちはどうしようもなく無鉄砲ですわね」
瑠璃は小さく笑った。
「よろしいですわ。ここまで言われて、背を向けるのもわたくしのプライドが許しませんわ。続けて差し上げます」
「やったぁーー!!!」光が飛び上がり、花が泣き笑いし、煉佳が「根性の勝利!」と叫ぶ。
莉愛も「バリやば展開w」と爆笑。
「ほんと、騒がしいわね……」結衣はため息をつきながらも、どこか安堵していた。
「蒼葉、お水いる?」
「…今描いてるから」
――数日後。
放課後の体育館。
9人が円陣を組み、汗だくになりながら練習していた。
「もっと声出していこう!」
「ステップずれてる、合わせて!」
「根性だー!」
「バリやば盛り上がりやん!」
掛け声が飛び交い、笑いと真剣さが混じる空間。
その中心に、もう迷いを見せない瑠璃の姿もあった。
9人の動きはまだぎこちない。
けれど確かに、同じ方向を向いて走り出していた。
こうして――
Aster《アスター》の1年目は幕を閉じ、彼女たちの挑戦は次のステージへと進んでいく。
挑戦の星座 〜一年生〜 非常口 @ohenjiya-tocky
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます