第8話 揺れる想いとポニーテール

放課後の教室。

あかりはな日菜ひな結衣ゆい煉佳れんか莉愛りあ蒼葉あおば瑠璃るりの8人が集まっていた。


光が勢いよく言う。

「よし!次の仲間を探そう!」

「……まだ増やすの?」結衣が眉をひそめる。


その時、花が静かに口を開いた。

「私ね……ずっと憧れてたんだ。9人でステージに立つ姿に」


「9人?」莉愛が首を傾げる。

「うん。一時代を築いた9人組のアイドル。すごく綺麗で、華やかで……みんながそれぞれ輝いとって。私も、ああいう風に歌って踊りたいって思ったっちゃん」


花の頬はほんのり赤く染まり、目は真っ直ぐ。

「だから……アイドルやるなら9人が良い、9人やないと、ダメなんよ」


短い沈黙のあと、光はにっこり笑った。

「じゃあ決まりだね!9人になるまで、絶対探す!」


昇降口。

鞄を肩にかけた風間心春かざまこはるが下校しようとしていた。

青いポニーテールが夕日に揺れる。


またもや光が突撃していく。


「あ、心春ちゃんだ、待ってーっ!」

光が突然走り出す。

「勝負だ!どっちが速いか!校門までね」


心春は「えぇ…」と驚きながらも、自然とスピードを上げる。

あっという間に光を追い抜き、ゴールの校門に到着。


「は、はやっ……!?」光が膝に手をついて息を切らす。

「根性がまだまだ足りんやった!」煉佳が笑いながら遅れてゴール


心春は小さく笑った。

「……変な人たちやね」


「ねぇ花!すごくない!?」

「うん、スポーツ万能って感じ……」

光は心春の前に飛び出した。


「君!一緒にアイドルやらん!?」

唐突すぎる勧誘に、心春は目を丸くした。

「はぁ!?アイドル?……いやいや、私そういうの興味ないかな〜」

苦笑いしながら手を振る。


煉佳がすぐに割り込む。

「でもお前、絶対ステージで映えるって!根性もあるし!」

「うんうん!明るさもあるし!」莉愛もニコニコと乗っかる。


「ちょっと、勝手に盛り上がらないの!」結衣が注意するが、もう遅い。

心春は両手を振って必死に遮った。

「待って待って!ホントに気持ちはありがたいっちやけど……今は無理!」


「……今は?」花が小さくつぶやく。

心春は少しだけ視線をそらした。

「……考えさせて。みんなが楽しそうなのは分かるっちゃけど、私にはまだ……」


その言葉に光は笑顔で頷いた。

「うん!また話そう!絶対仲間になってもらうけんね!」


「……元気すぎるなぁ、ほんと」

心春は肩をすくめながらも、心の奥に少しだけ温かいものを抱えていた。


こうして、風間心春は「保留」という形で一度仲間入りを見送る。

だが、それは確かな未来への布石でもあった

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