普通の女子がレズ女子に何故かキスをされそうになり、断るが結局……な話
ポンビン
普通に平凡に常識を持って生きたいだけ
この世の中には普通がある、普通とはどこにでもありふれたようなものという意味だ。きっとこれは誰でも知っているだろう。これがそう、俗に言う普通だ。
どんな人でも常識を持っていることだろう。
ただそんな常識を持たない特異な存在もいることも、私────
なんなら今目の前に居て、鋭い目つきで今にも鍋で煮られて食べられそうだ。私先程、朝凪さんに教室からいきなり連れ出されここに来た。
「それで……佐藤さん────」
「ひゃ、ひゃい」
ブルブルと身体を震えさせながら答えると、目の前にいる……異端────
「そんなに怯えなくてもいいじゃない……私はただ貴方のファーストなキスを奪ってあげようとしただけよ」
「お、怯えますよそりゃ!てかファーストなキスってなんなんですか……ファーストキスでいいじゃないですか!」
「今まで怯えた女子はいなかったんだけど……ファーストなキスってファーストキスよりもお洒落な気がして……」
やっぱりそうだ……連れてこられた頃から思っていたが、この人は普通じゃない。早く逃げないと行けない……と私の直感がそう言っている。
「す、すみませんちょっとトイレに行かないと……」
「何言ってるのかしら、ここはトイレよ」
「あっ、えーと和式便所じゃないと私無理なんですよ!!」
時すでに遅し────
私から見てもバレバレな嘘をついてしまった……なんて思案していると朝凪さんがニヤリと鳥肌が立つような笑みを浮かべ、奥の方に行きドアをバッと開けた。そこには和式便所が置いてあって────
「あら、知らなかったの?ここのトイレ和式便所も付いてるのよ、というかバレバレな嘘……よくそれで乗り切れると思ったわね」
「それは私も思いましたけど……てか根本的な問題ですよなんで私とキスしたいんですか!」
「ファーストキスを奪ってあげようと思って」
「それはさっきも聞きました!」
「本当よ?そこら辺の変な男なんかよりクラスで高嶺の花のような私がファーストキスを奪ってあげた方がみんな嬉しいでしょう?」
たしかに高嶺の花のような存在だけど……それ自分で言うんだ。ファーストキスを奪ってあげる……なんて考え普通の人なら考えない。あと女の子同士でキスするなんて常識なんて持ってないも同然だろう。普通なら男女でキスをするものだ。
「私は貴方と違って、常識を持っているので、女の子とキスはしたくありません!」
「へぇ〜普通ねえ?貴方と私の常識は違うのは当たり前でしょう?」
「……当たり前?」
「そう、当たり前なのよ……人間違う認識や考えを持っているからぶつかり合ったりするものよ、ほら今だって私は貴方とぶつかり合ってる」
「物理的にですけどね」
朝凪さんは今トイレの壁に肘と手をつき、私の股の間に膝を差し込んでいるような体制になっていて、とてもじゃないが逃げ出せるような状態でないことだけはわかる。ただ、そう意味で言ったのでは無いことは私にはわかっていた。自分の考えが変えられるのが怖くて違う意味で捉えたことにしたが、
しかし朝凪さんの朝凪さんと私の認識や考え方が違うのは当たり前……という考え方が正しいような気がした。
「私はそう意味で言った訳ではないのだけど……それもそうね、でも貴方が逃げ出そうとするのだからイケないのでしょう」
「もう逃げませんから、離してください!」
「話してください?わかったわこの状態で続けるわね」
「絶対分かってて言ってますよね?!」
なんて騒いでいてもこの体制で続けるようで、朝凪さんはそのまま話し始めた
「まあ、話すわよ、私はレズ───レズってわかる?女が女に恋愛感情を持っているということよ」
「へ、へぇ〜」
私の記憶の中にもそういう────女の子が好きな女の子がいたような……
「でもレズってことは他の人には気持ち悪く思われるようでね、昔好きな子にもなんで女の子が好きなの?って凄く不思議そうに言われたのよ」
「そ、そうなんですね……」
なんだろう、知っている話のような気がする。
「まあ、その女の子って貴方のことなのだけれど……小学校の時だったから覚えてないわよね」
「……す、すみません忘れてました」
「いいわ、別に私の事なんて忘れるくらいの関係だったものね」
すごく言葉の端々からトゲを感じるような気がするが……まあそれは気にしないでおこう。
「で、でも今は私のこと好きなんじゃありませんもんね?」
「いつ、誰が、どこで、そんなこと言ったのかしら」
「え?」
「勿論今も好きよ……だから告白ついでに、キスしようと、今日ここに呼んだんだけれど、早くキスがしたくて、勢い余ってキスをしようとしてしまったわ」
告白、キス……トイレでするってムード無さすぎない?やっぱり異端だ、普通じゃない。だけどそんな普通じゃない所も人間は尊重しあって生きているのか……なんて考えてしまった。
「そ、そうなんですか……」
「ええ、それで返事はどうなのかしら?私からしたら告白したも同然だったのだけど」
高嶺の花のような朝凪さんが自分に告白してきているなんて他の人だったらすぐに返事をOKにするだろう。それが普通だ。
その常識に
「嫌です、だって朝凪さん他の女子にもしてるみたいな感じのこと言ってたじゃないですか」
「してないわ、それは貴方にキスする口実が欲しかっただけで……
「ええ、もちろんです、
「ええ、いいわ、今からこの学校の女子全員に聞いたっていいわよ」
凄い覚悟だ。もしかしてほんとに……?
「もしかして本当に他の女の子にキスしてないんですか?」
「ええ、勿論よ、私のキスは貴方に捧げてあげるつもり……それで嘘じゃないことがわかったかしら?返事を最後に聞くわ……私と付き合う気はある?別に断ってくれてもいいわ、否定権は誰にでもあるのだから」
否定権は誰にでもあるとか言っときながら、そんな、怯えているような顔で言っている。断った時には罪悪感で私は死にそうだ。だが────
私からしたら再会したクラスメイトにいきなり告白された。という状況になる。幾ら朝凪さんみたいに美人な人だとしても、今の朝凪さんを知らない。
「そう……ですね、まずはお友達から……とかどうでしょう?」
自分と全く違う考えの人だとしても、時間をかけてその全く違う所を分かるようにしたらいい。なんて、考えるほど朝凪さんに考え方を変えられてしまった。
「お友達、からね……いいわお友達期間中に貴方を完全に堕としてみせるわ、まあそうね……待ちきれないから少しだけ先払いでもしてもらおうかしら」
なんて朝凪さんはそういうと私の唇に朝凪さんの唇を近づけてこようとしてきた。だが、今度は拒むことが出来ず────
見事にファーストキスを奪われてしまった。
普通の女子がレズ女子に何故かキスをされそうになり、断るが結局……な話 ポンビン @Ohuton29
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