EPISODE5「神狼」
「見せてやるよ…俺の、変身!!」風雅の両目の目元には疾風を表したかのような痣が浮き出て、背後には巨大な銀狼が立つ。体は竜巻に包まれ、砂や重機が舞い上がる!そして手刀で竜巻を唐竹割りにして、竜巻は消滅、巻き上げられた重機は重い音で地面に落ちた。そこから現れたのは、全身を銀色の鎧で覆われ、爪が鋭く猫背であり、狼の仮面を着けた風雅だった。「これが俺の変身…『神狼』だ。」
ヒカルは変身した風雅を見た時、興奮と少しの恐怖を感じた。「あれは…一体…?」「あれが妖が使う戦闘術“変身”だ。」「変身…!」「妖には人間態と変身態という二つの形態があるんだ。君が遭遇したカマキリ男も変身態だったんだ。」「たしかに、顔も腕もカマキリそのものだった…」
その一方、変身した風雅は“ライノ”と取っ組み合いのパワー勝負に持ち込んだ。「うぼぁぁぁぁぁ!」「嘘だろ、変身したのにまだ力に差があるっていうのか!」また持ち上げられて振り回されそうになるが、変身すればパワーは倍、強化された脚力で地面に踏ん張り頭突きを食らわせた。さすがに強化された頭突きでは多少の出血はしたようだ。悶絶した“ライノ”だったが風雅から距離を取り、右足を地面に何度も後ろに蹴り突進を仕掛けて来た。「くっ!」風雅は何とか“ライノ”の体を掴み、受け止めきれるかと思った矢先、“ライノ”は出力を上げ風雅を真上に吹っ飛ばした。このままでは“ライノ”の角に貫かれてしまう。「ちくしょう、空中じゃ身動きが制限される!このままじゃ…」「このままじゃダメだ!!」突然ヒカルはそう叫び、“ライノ”の元に向かった「おい!また死なれちゃ困るんだけどー!」と雷牙が止めてももう聞かない。不敵に笑い、風雅が落ちてくるのを待つ“ライノ”はヒカルが向かっていることに気づいていない。「うおぉぉぉぉぉぉぉ!くらえサイ野郎!」「?」ヒカルは渾身の正拳突きをお見舞いした。あの風雅でさえも吹っ飛ばした奴の体に子供の拳が効くはずないと思っていた。だが「………!?」“ライノ”が下を向くと、ヒカルの拳が当たった腹は見事なまでのクレーターが出来ていた。そして遅れてやってきた巨大なパワーが“ライノ”を吹っ飛ばした。それを見ていた雷牙は「おいおい嘘だろ… 人間のパンチで妖が吹っ飛ぶとは、前例がないぞ…」あまりの想定外の現象が起きて片手で頭を抑えた。風雅はヒカルの危険な行動を見て地面に着地。ヒカルはまた怒られると覚悟していたが、「あー…どういうことだ?」仮面のせいで少し声が籠もっているが明らかに困惑している声だ。「また危ないことしやがって。まぁ死なずに済んだし、結果オーライ…んーまぁ良くやったな。」「はぁ〜」と予想外の反応でヒカルの目は輝きに満ちた。
そんな時再び“ライノ”は立ち上がる。「おい“ライノ”!てめぇ俺が休んでる間に殺しまくったらしいじゃねぇか!被害者はトラックドライバー、通学中の小学生やお年寄り、レストランで食事をしていた30人以上の客。全部ミンチにしやがって!」「グヘヘヘ」“ライノ”は顔が歪みきる程の恍惚とした表情を風雅たちに見せた。その時確信した。「(あぁ、コイツは暴走して動いていたわけじゃない…わざとやってるんだ叫んでるのは興奮しているだけ…)やっぱ力の使い方間違えると人間こうなっちまうんだよな…」風雅は走り両手の爪で“ライノ”をひっかく。硬い皮膚には効かないはずが先程のヒカルの攻撃でダメージ無効の硬い皮膚が壊れたようだ。次は重機の側面を足場にして跳ね返り、ひっかき、地面を蹴ってまたひっかく。それを繰り返す。まるで獣、群れで狩りをする狼をたった1人で体現しているようなものだ。そして最後の一発は右手に風を溜めて弾丸の如きスピードで放つ「“疾風弾”!!!!」その拳は壊れた硬皮を貫き“ライノ”を撃破することに成功した。膝から崩れ落ち灰化消滅。同時に風雅の鎧も溶けて無くなった。ケータイを開き東刑事に報告し、この事件はひとまず幕を下ろした。
ー八雲邸ー
家に帰った八雲兄弟はヒカルのことについて相談していた。「なぁ兄貴、あのヒカルって子どう思う?」「俺も分からん。ほんとに人の子か?」思えば不審な点が多い。普通に即死するはずの攻撃を受けても生きていたどころか翌日には動けるようになっていた。そして先程の“ライノ”を吹き飛ばしたパンチ。謎が深まる中警察の方から雷牙に電話が入った。「は?…あっ分かりました。」と言って電話を切った。「警察から伝言だ。一之瀬ヒカルを妖狩の保護下に置けだとよ。」「え!?何故よ。」「警察が言うにはヒカルは半分妖の状態にあるようだ。中途半端に覚醒したから覚醒しても何の術式も持ってないことになっている。」二人はヒカルが眠る部屋を少しだけ顔を出して覗いた。「俺たちどうしましょ…」
EPISODE5「神狼」完
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