最終話 もう誰かと入れ替わりたいなんて
俺は一糸纏わぬ姿になった。
するとすぐさま、佳麗さんの身体の『オトコ』が、
彼女の意思とは関係なく大きく反応し、彼女も手早く服を脱いだ。
しかし哀しいかな。
そそり立つモノを直に見ても、俺の身体にはまるで変化がなかった。
そこで、裸体を鏡に映してみた。
あどけなさと美しさが共存した奇跡的な顔立ち、一点の曇りもない純白の美肌、
程よい大きさで形のいい乳房、引き締まった太もも。
うーん、やっぱりこの人、見た目に関しては……たまらない。
俺の中はすぐさま湿り始めた。
そう、がさつな俺ですらその魅力を損なわないためにそれなりにお手入れしてきた、
この素晴らしい身体を一刻も早く手放したいわけじゃない。
ただ……佳麗さんに高校生活も悪くなかったと思わせたい、
卒業式だけでも出てほしいだけだ。
「すげえな……俺、こんなに湿ったこと、ねえよ……」
「そういや、俺の時もあんまり湿ってなくて痛そうだったね。
なのになんで、何度も肉体関係ありの夜遊びなんて……」
「男の人が俺に夢中になって、必死でむしゃぶりついてくるのが快感だったんだ」
「ああ、佳麗さん、他人を見下すのが大好きなナルシストだもんね……」
道理で、見つかるまでの2ヶ月、俺の身体でそっち方面のことは何もしなかったわけだ。
「うるせえよ!」
「でも今回は、きみは俺の身体だからね。
そういうの抜きの、純粋な肉体の快感を味わってみてよ」
「自分の身体にがっつくなんてバカみたい……」
「ああんっ、でもでもでも」
「なに俺の身体で『しな』を作ってんだよ、きもちわりい!」
そう言いつつ、彼女は俺をほぼ反射的に押し倒していた。
「ああっ、くそっ」
そんな先入観や、プライドは捨てちまえよ。
俺はもう、とっくに捨ててるぞ。
今はただ、この欲望うごめく泉をかき回して欲しい。
きみも身体の声に素直になって、ただただ快楽に身を委ねればいい。
なにせ、相手は俺の身体だ。
どうやったらより悦ばすことができるか、世界の誰よりも知ってるぞ。
俺は9ヶ月前までは自分のものだった腰に、しっかりと脚を廻した。
「あっ……あっ、やっ、柔らかっ……
俺のカラダがお前のカラダに与える感覚って、こんなに……」
「ああああああ、そっ、そんなに早く腰振らないで、こっ、こっ、壊れるうううう」
佳麗さんは早くも俺の中に一発目を発射した。
「や、やべえよ、一発じゃ全然治まらない……
き……気持ちよすぎてボーッとする……ま、麻薬ってこんなんなのかもね……
そ、そうか……そりゃむしゃぶりつくよな、馬鹿にされても執着……するよな……」
「ふふふふ、自分の身体の虜になるなんて、とんだ変態ナルシストさんだねえ」
「お前も自分の肉棒で気持ちよさそうな声あげてるくせに」
俺達は早速二回戦を始めた。
体力が続く限りいくらでも味わいたいけど……
おっと、大義名分を忘れちゃいけない、いけない。
佳麗さんが気持ちよさそうに二発目を出したその時、
俺は自分の頭をしたたかに、彼女のそれと激突させた。
惚けた快感と、頭突きの激しい衝撃と痛みが相まって、
俺の魂が一瞬、宙を漂ったのがわかった。
目を覚ますと、手が明らかに先ほどと違い、血管が浮いているのがわかった。
佳麗さんが俺の顔を覗き込んでいた。
「よしよし、これからは男喋りはやめようね」
「わかってますよ。女の子としてはその方が優しくされて生きやすいしね」
彼女は頬を紅らめていた。
さっきしたことがことだし、恥ずかしいのかな。
浦沢一家は、このタイミングで家に戻るのもバタバタするからと言って、
佳麗さんの卒業式までこの部屋にいた。
まあでもその間、ご両親がおわびとお礼と言って、ご馳走してくださったり、
ちょっといい日用品をくださったりしたから、俺にとっても悪い話ではなかったけど。
卒業式当日、あの佳麗さんが、なんと涙ぐみながら帰ってきた。
「先生の話が終わったらとっとと帰ろうと思ったけど、
クラスメイトから写真撮影に引っ張りだこで、びっくりしちゃった。
しかも、あの洲渕亜美と浜添千歌からも。
……同じ所に行くはずの舞華と小夜里に泣きつかれて、
ああ、つくづく、地獄だと思ってた高校にも高校ならではの楽しみようがあって、
私みたいなのでも振る舞いによっては好かれてたんだ、
本当に何も見えてなかったんだな、って思ったわ……」
ああ、彼女は本当に成長した。
一刻も早く元に戻って、卒業式は本人に出席させた甲斐があったというものだ。
もう誰かと入れ替わろうなんて、二度と考えない。
……俺ももう、夢物語にでも二度と思わない。
「でも、もう遅いんだよね……」
「まだまだ大学があるじゃないか」
「……そうね!
ああ、慣れ親しんだこの部屋も、今日からは完全に江波さんのものなのね……」
「いや、きみが創ったことには違いないんだし、いつでも来ていいよ。合鍵作っておくね」
「ありがとう……」
俺だって、きみがまた来てくれたら嬉しいよ。
創ってくれた仕事の人脈と、この部屋を維持できるだけの収入は意地でも守り抜くから、きみはそれをいつまでも側で見ていてくれ。
寧ろ、大学卒業した後なら、ずーっとこの部屋に居てもらったってかまわないよ。
なんてね。
なんてね。
俺と入れ替わった美少女JKが失踪しました あっぴー @hibericom
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