第6話 男なのにイケメンと合コン
「よかった、踏まれた所、傷や痣にはなってないみたいだね。
……ねえ、江波とかいう嫌な男を忘れるためにもさ、今日合コン行かない?」
「えっ! そ、そんないきなり」
「そりゃ佳麗にとっては突然だけど、私達にとっては前からの予定だよ。
相手の男の子たちも楽しみにしてるんだから、ガッカリさせたら悪いよ。
ほら、名門大学の付属校だし、みんなこんなにかっこいいんだよ?」
小夜里ちゃんが見せてきた写真には、たしかにかっこいい男子が3人写っていた。
でも、かっこいいというのはあくまで客観的な話。
当然ながら、俺の胸は全く高鳴らなかった。
「あっ、あれっ……? あっ、そっか。
佳麗は今、あの事件で男の子がこわいんだっけ……」
「そ、そうなの!」
男と出会ってどうしろと言うんだ。
「佳麗いると男子が盛り上がるのに残念だなあ……じゃあ、誰か別の人誘おうか……」
舞華ちゃんが立ち上がった。
そ、そうだった!
男なんてどうでもいいけど、プライベートの舞華ちゃんを見るチャンスじゃないか!
「そこまで言われちゃしょうがないなあ。よーし、私も行くよ」
「やったあ!」
しかし、この清楚そうな娘たちが合コンに行くんだなあ……
まあ、佳麗さんの友達なんだから、そりゃそうか……
「あそこのカラオケ店ね」
「あれっ、一回家に帰らないんだ」
「そりゃそうよ、親の説得めんどくさいし、うちの制服評判いいんだから」
指定された部屋に着くと、舞華ちゃんと小夜里ちゃんはスカートを巻いて短くし始めた。
「佳麗はしないの?」
「わ、私は今日は清楚キャラでいくことにしたから……」
ああ、そうか。
佳麗さんも合コンの時だけスカート短くしてるのか。
だから学校ではスカート長くても突っ込まれなかったんだ。
二人のスカートは、アンダーパンツが見えそうなぐらいに短くなった。
そして露わになった瑞々しい……ふっ、ふとももが……
なっ、なんてやる気満々なんだ……
「と、トイレ行ってくる……」
指定時間きっかりに男達が入ってきた。
彼らもまた制服を着崩していて、
舞華ちゃんと小夜里ちゃんを見て明らかに鼻を伸ばしていた。
俺は自分も興奮しておきながら、
お前ら彼女らをそんな目で見るな、という矛盾した感情を抱いた。
でも、こういうグループだからこそ、俺は佳麗さんとああなれたのだし、
彼女ら自身が彼らとそういう関係になりたいのであれば、俺には止める権利なんてない。
寧ろ、彼女らが男の視線を全て奪ってくれれば、俺はモテない女の子の皮を被って、
舞華ちゃんの揺れる大きなお山をまったり観賞できるというものだ……
と、思いきや。
「きみはガツガツしてないんだね」
いつの間にか席替えがなされ、髪を耳の辺りで切り揃えた男が正面に座っていた。
「ふふっ、だって、他の二人の魅力と比べたら、私なんてとてもとても」
(※意訳 俺に構うな、相手にされたがってる二人のどっちかに行ってろ)
「謙虚なんですね。でもそんな奥ゆかしさも含めて、僕はあなたが一番だなあ。
制服着崩さない人の方がタイプだし……」
そういえばこの男も制服を着崩していなかった。
着崩している二人が派手なので気づかなかったらしい。
まさか着崩してない佳麗さんの良さがわかる奴がいるなんて、同士よ。
「あっ、あのっ、二人でどっか行きませんか?」
で、でも……やっぱり俺は、いくらイケメンでいい奴でも、男は、男は……っ!
男とあんなことやこんなことをするかと思うと、鳥肌が立つぜっ!
「す、すみません、あなたが真面目な人なのはわかるんですけど……
私、実は昨日酷い目にあってて、男の人が怖いんですっ!」
俺が思い切ってこう言うと、さっきまで穏やかだった男性陣が全員豹変した。
「あ? じゃあこんなとこ来るなや。
せっかく上手く3組まとまりつつあったのによ」
「あんたはただの客寄せパンダか?
そういうの居ると男の誰かが必ず恥かくから迷惑なんだよなー」
恐い。
特段ガタイがよくもない男のことが、こんなに恐いなんてどうしたことだ。
そうか、女の子になった身からすれば、
自分より声も体もでかい生物に凄まれたんだから、怖くて当然だ。
女の子ってどうしてあんなにビビリが多いんだろう、なんて思っていた自分の無神経さ、想像力のなさが嫌になった。
「す、すみません……」
「あー、もういいや、マジ萎えた。料金は客寄せパンダが払えよな」
「そんな……」
男達は伝票を叩きつけて去って行った。
「ご、ごめん、二人とも……名門校のイケメンとのチャンス、私がダメにしちゃって……」
私は頭を擦り付けて謝った。
「いいんだよ、予想できたことだしね。
男の子が恐いって言ってるのに誘った私が悪かったよ」
「小夜里……」
「それに、あれだけであそこまで怒って伝票押し付けるような男共なんて
いくら顔と頭が良くてもこっちからお断りだしね。料金は3人で払いましょう」
「舞華……」
二人の優しさが却って痛かった。
だって、一番悪いのはやはり、俺なのだ。
俺も男だからわかるが、やっぱり出会いの場となれば大いに女の子に期待をするし、
だからこそ矮小な自分を隠して優しくする、背伸びする。
それを、最初からやる気がないんです、なんて言われたらどんなに落胆するか。
なのに俺ときたら、アイドル女優的な内面を演じたいと思ってたくせに、
舞華ちゃんのお山を観賞したいなんて欲望にあっさり負けて、
やる気もない合コンに参加して、みんなの期待を裏切って空気を壊すなんて……
「しかし、イケメン見たら元気を取り戻すかもってちょっと思ったんだけど、
本当に昨日のことがトラウマなんだね。
治るまで合コンには誘わないから、安心してね」
「ありがとう……」
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