俺と入れ替わった美少女JKが失踪しました

あっぴー

第1話 初対面の美女との甘い夜

俺の名前は江波湊、24歳。

不況に苦しむ会社からリストラを言い渡され、まさに今、最後の退社の真っ最中だ。

その状況なら、役に立っていない者から切られるのは当然。

そう頭ではわかっていても、やはり腹立たしさが募り、

すぐに次の仕事を探す気になんかなれず、今日ぐらいはパーっと気晴らしをしたかった。

(といっても、何すっかなあ……)

独りで何かしても虚しさが募るだろうから、誰かにそばにいて欲しい。

かといって、友達や両親に励ましてもらったところで、

仕事がある奴が上から目線で何言ってんだ、という気分になりそうだった。

(あー、仕事があるかないかもわからん赤の他人と、パーっと馬鹿騒ぎしてえなあ……)


というわけで、俺は生まれて初めて、クラブのドアを開いた。

その派手派手しくアゲアゲな光景にしばし圧倒されていると、ふいに肩を叩かれた。

「あなた、ここ初めてでしょう?」

振り向くと、無駄な所に肉のないしなやかな身体に

ぴったりした白く輝くドレスを身に纏った20代前半と思しき女の子がいた。

艶やかな黒髪ロングにシルクのような肌、黒曜石のような瞳をしている。

俺は全身の血の巡りが変わっていくのを感じた。

「ははっ、ばれちゃいましたか」

「だって、明らかに仕事帰りに初めて来ました、って感じですもん」

「ははっ、そんなに挙動不審でしたかねえ」

「でも、そこが他の人と違って、新鮮かも……二人でゆっくり話しませんか?」

女の子は俺の腕を引っ張った。

えへへ、神様が俺を気の毒に思ってくれたのかなあ。

鼻の下が伸びているのが自分でもわかった。


てっきりカフェか居酒屋あたりに連れていかれるのかと思っていたら、

女の子は白い壁に赤い屋根のお城のような建物の前で足を止めた。

『Hotel ローズクイーン』

「ああ、疲れちゃいました……ここで休憩しません?」

「えっ」

ま、まあ俺にとっては手間が省けて好都合ではあるが……

「あ、あのさ、何する所かわかって言って……るよね?」

「やだあ、私を子供だと思ってるんですか?」

彼女は膨れっ面も愛らしかった。

おお、こんなに可愛い娘が、そんなに俺のことがタイプとはね……

ニートになったのは見た目ではわからないとして、

髪の毛と肌に艶がなくて、幼児体型でラクダみたいな顔の俺のことが……

そう思うと胸と股間が熱くなった。

「わ、わかったよ、ごめんね、覚悟を疑うようなこと言って」

優しく彼女の背中を押すと、彼女は一瞬ビクッとしつつも受け入れた。

ふふっ、案外初々しいんだな。

「先にシャワー浴びてきな」


風呂上がりの彼女は、黒い髪が艶めいて……

「あれっ、メイクしてない方が可愛いじゃない、清純派の女優さんみたいで」

「そうですか? でもクラブ行く時はメイクしないとお酒出してもらえないんで」

たしかに18歳ぐらいに見える。

「でも、そう言ってくださるなら、貴方と会う時はいつもノーメイクにしようかなあ」

な、なんてかわいいことを言ってくる娘だ!

仕事ができない俺に冷たくあたってきた、あの会社の女性たちとは大違いだ。

えへへ、案外俺って、プライベートで会うぶんには、イケてる男なのかなあ。

「本当に綺麗な顔してるね……しかもすっごくいい香り……

俺も君みたいに生まれてきたかったなあ……

そしたらリストラなんかされなかっただろうに……」

俺が顔を撫でると、彼女の全身に鳥肌が立った。

あれっ、おかしいな……?

「あっ、ありがとうございますっ! そんなこと言っていただけて嬉しいですっ!

嬉しすぎて鳥肌立っちゃいました!」

なあんだ、そういうことね。

よーし、急いでシャワーを浴びてこよう。


「えっ、私の名前?」

なんでそんな渋い顔をするんだ。

「だ、だって、これ一回きりで終わらせるつもり、ないでしょ?」

俺だってクラブで出会った相手に、名前をはじめ自分のことを言うつもりはなかった。

しかし、この娘となら、リストラされたのを明かすことになろうとも何度も会いたかった。

「ま、まあそうだけど……そういうのは一回楽しんでからにしない?

こういうのは勢いが大事でしょう?」

「ふふっ、それもそうだね、流れに水を差すようなこと言って悪かったよ。

しかし、そんなに早くしたいんだね、えっちい娘だね」

下着を脱ぎ捨てる。

彼女は一瞬汚物を見たかのようにぎょっとしたが、すぐに笑顔に戻った。

ん? なんだろ?

俺のことは好きだけど、これはあんまり見慣れてないのかな?

でも、その方が却って、教えてあげられるって感じでゾクゾクするかも……

更に欲望が膨れ上がり、いよいよ覆い被さろうとすると、彼女は両手で制止した。

「ちょ、ちょっと待って……わ、私が上がいい!」

「おやおや、積極的だね……?」

なんであんまり慣れてなさそうなのに、わざわざ上を……?

頭に疑念が過ったが、彼女がその美しく柔らかな太股に

一生懸命に俺のモノを挿れようとするのを見ていると、すぐに興奮が疑念を上回った。

きっと下だと圧迫感が嫌だとか、なにか理由があるのだろう。

「いっ、痛っ……」

「大丈夫かい?」

「だ、大丈夫!」

彼女は表情を苦痛に歪ませたまま、激しく腰を振り始めた。

なんでそこまでやるんだ、大丈夫かと疑念と心配が浮かんだが、

その感情はまたも一瞬で快感に支配された。

あまりの悦楽に気が遠くなりかけたその瞬間、彼女の慌てた声がした。

「あっ、わわっ、脚が、脚が攣ったぁ……」

彼女は俺と繋がったまま前に倒れ、二人の頭と頭がしたたかにぶつかった。

火花が飛ぶような激しい痛みー俺はしばし、意識を失った。


俄かに意識が戻ってきた。

うっすらと目を開けてみて、俺は腰を抜かした。

彼女の姿がない。

それどころか、俺の鞄と服……靴に至るまで持ち物一式が消えている。

パンツすらないってどういうことだ。

くそっ、もしかしてあの娘、身体で油断させてからの泥棒だったのか?!

しかし、それにしてもおかしいぞ。

なんで彼女のピンクの鞄に、白く輝くワンピース、

薄紫色のピンヒールはここに残されているんだ……?

白地に水色の刺繍が入った下着まであるぞ。

しかも、なんだかさっきから身体の感覚がおかしい。

妙に柔らかい感じがするし……目につく腕は血管や筋肉が見受けられずやたら白いし……

恐る恐る全身を鏡に映してみて、俺は腰を抜かした。

な、なんだこれ?!

おっ、俺……


彼女になってるーーー!

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