第11話 リブの消えた日々

【これまでのあらすじ】


 ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!

 ハンバーガー101個でタイムリープする力を手に入れたドーナツ少年。

 393回目のリープで、ついに世界一嫌いな女・リブに反撃に出たが、またも殴り返された! 

 ハンバーガーとタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

 俺が親父の力を使ってリブを追い出したのは汚いって? 


 だが、考えてみて欲しい。そもそも悪いのは、家賃をため込んだアイツらだ。アイツらが家賃をため込んでさえいなければ、俺だって親父を動かすことは出来なかった。

 

 というわけで、俺は実に清々しい気持ちで、リブのいなくなった小学校生活を楽しんだ。

 

 さらに、俺はタイムリープについて研究を重ねた。


「ビックパック101……いや、1001個だ!」

 

 一体、俺はどこまで過去に戻れるのか?


 ビッグパック101個を食って夕方の音楽室に戻れるなら、1001個食えば、もっと過去に戻れるかもしれない。恐竜時代の王様になって、恐竜ハンティングだって出来るかもしれないだろ?


 俺は地獄に飛び込む覚悟で、食って食って食いまくった。


 101個を超えて、120個、121個と食い続ける。パティの塊は逆流寸前。苦しくて涙がにじむ。そして、156個目のビッグパック。


 なんとか呑み下したと思った瞬間――。


「ぐふっ」


 俺は、トイレに駆け込んだ。


 そもそも1001個のビッグパックを食べることが無理だった。


 研究の結果、どんなに食ったところで、戻れるのは三日前が限界だと判明。逆に、食べる数を減らして、もう少し楽にタイムリープできないかとも思ったが、リープを発動させるには、最低でも101個は食べなければならなかった。


 それにしても、タイムリープはすごい武器だ。


 最初にリープした時は、その秘密をぺラペラと家族に喋ってしまった。けれど、リープが俺の強力な武器になると気づいてからは、誰にも話さなかった。


 もしかすると、他のヤツだってビッグパックを101個食べればリープ出来てしまうかもしれないだろ?


 というわけで、俺はリープの力を使って、学校での権力を盤石なものにしていった。


 テストでは、ガリベン野郎の答案をバッチリと目に焼き付けてタイムリープ。成績は常に上位をキープした。体育の授業でバスケをする時は、シュートする敵の前に、リープして立ちはだかり完全ガード。音楽の授業は……どうでもいい。俺の歌は元から完璧だ。とにかく、先生たちも俺を認めざる得なかった。


 だけど、俺が何より好きなのは、みんなに『すげえ』って褒めたたえられる瞬間だった。


 そのための俺の最大の武器がトークだ。


 滑った時は、すぐにリープ。最高に盛り上がる言葉でやり直す。


 リープを繰り返す度、俺のトークはどんどん冴えて行った。男どもは『ドーナツ、最高!』と興奮、女の子たちは熱い視線。俺はいつでも、キー・フォレスタ小の王座に立っていた。



 そんなある日、俺は小学校生活の最後を飾る、最高のイベントを思いついた。


 拍手の渦、歓声、俺の名前を叫ぶ女の子たち――。


 妄想するだけで、心臓がドラムみたいに高鳴った。


「王様フェスティバルだ!」

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