第10話 393回目。ついに反撃!

【これまでのあらすじ】


 ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!

 ハンバーガー101個でタイムリープする力を手に入れたドーナツ少年。

 世界一嫌いな女・リブに反撃するため、393回目のビッグパック101個を注文した!

 ハンバーガーとタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


『いくら王様でも、小学生に100個は無理』


 393回目の店長・パクドナルドとのビッグパックを巡るやりとり。


『コーラ、返してくれる?』


 393回目の、ダサいシャツを着たおっさんとのコーラを巡るやりとり。

 

 全ての393回目を終え、俺は393回目のビッグパック101個にありつく。竜巻の速さで101個を平らげる。そうして俺は、ようやく393回目の音楽室のリブに再会したのだった。


 リブは相変わらず、眼鏡を光らせ、潰れた毛虫でも見るような目で俺を見つめている。だが、そんな顔を見てさえも、勝利の予感に笑いがこみ上げるのを、抑えられなかった。


 リブが不愉快そうに眉をひそめた。


「何、ニヤついてるの?」


「勝利の予感だ」


「イカサマ師じゃなくて、本当にバカなの?」


「いいから、大人しく殴られてろ」


「アンタに私を殴るなんて無理」


「だが、殴られなきゃ、困るのはお前とお前の家族だ」


 俺は、これ見よがしに自分の拳を上げた。これから、この拳がリブ・スタインの頬に突き刺さる。ゴミのように床に転がったリブを見るのは、どんなに爽快な気分だろう。


「お前の親父、アパートの家賃を三ケ月もため込んでるって? パパに頼めば、お前たちを追い出すことなんて、鼻くそをほじるより簡単だ」


 リブの顔色がさっと変わった。とても良い。非常に満足だ。


「親の力を借りるなんて、汚いヤツ」


「親の力も、俺の力だ」


 リブの唇が微かに震える。これもまた満足だ。


「わかるな? 今度という今度は……」


 俺は、拳を引きつけると叫んだ。


「大人しく殴られてろ!」


 ついに、リブの奴を叩きのめすことが出来る。


 101×393+1=39694個。


 これだけの量のビッグパックを食いに食い続けて、ようやく、やっと――


  


 

 殴ったはずなのに、倒れていたのは俺だった。


「……俺に、逆らうのか?」

 

 音楽室の床に無様に倒れた俺に、これまでで最も冷たく、尖った声が突き刺さった。


「もしも将来、世界がひっくり返って、あんたがアメリカ大統領になったって、死んでもアンタだけには服従しない。よく覚えておいて。ドーナツ・トランペット」


 三日後、リブは学校から消えた。

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