第4話 図書館ではお静かに
辛い曜日と言われたら満場一致で月曜日と答えるであろう。だが、俺は辛くない。大学生は自由の身だ。
「......課題だるい」
大学の図書館で大量のプリントをめくっていた。紙が重なるほどやる気が下がっていく。これが、女子のスカートならなんぼでもめくろう。
「死んだ目をした童貞君みっけ!」
「あぁ、村瀬か」
派手な服に金髪ロング、意外と抑えめなメイクを完璧にしている美少女、村瀬梨花は俺と同学年であり最近知り合った友人でもある。今は至近距離で顔が見えているが、琴奈とは違い可愛い系の顔であり、タイプではないのでドキッとは全くしない。
「前田は顔に出過ぎ、他の男ならおっぱいか私の美顔を舐める様に見つめるのに」
「あぁ......村瀬に何も感じないからな」
「やっぱり、有原さん?」
「それも違うな」
幼馴染を異性として見ていないと言えば嘘になるが、実際は中学卒業と同時にあの感情とは卒業した。「もしかして俺の事好きなのか!」など、違った時の恐怖で、
「幼馴染でいる事が今は幸せかな」
「そっか、有原さんモテるのに良いの?」
「俺は独占欲はそこまでない。それに琴奈は見た目通りクール奴だから嫌がると思う」
「そっかな」
幼馴染と円満な関係を保つ為には少し冷めた感情を持ち合わせる事も必要になってくる。今では娘の様に感じたりもする。基本毎食作ってるし、
「意外と困ってるんだね有原さん」
「ん?」
「別に」
村瀬は少し喋ってからどこかに去って行った。次の授業まで時間があるので多分男漁りだろう。いつも「優良物件ないかな」と呟いているし、
俺は再度課題を確認して集中した。だが、また訪問者がやってきた。勿論知人であり幼馴染でもある。
「良吾、やるじゃん」
「意外と真面目な性格ですから」
「自分で言うな」
この関係はいつまで続くのだろうか? 小さな事でも笑い合える関係が好きだったりする。
「あ、有原さんもきてたんだ。前田! さっきそこにケータイ置いてなかった?」
「えぇっと......あ、プリントの下にあったぞ」
「お、ナイス」
村瀬は突然来て突然去って行った。そして静寂に包まれた。何故かは分からないが寒い。前に立っている人が特に怖い。長い付き合いで多分、
「琴奈さん? 大丈夫ですか」
「別に」
「いやでも」
「だから......何!」
これ以上触ってはいけない。警告が鮮明にイメージできた。ここは時間に委ねよう。プリントを触ろうとした時だった。
「村瀬さん可愛いもんね」
「まあな」
「あぁん?」
え! 同意を求めてきたのではないのですか。めちゃゃくちゃ嫌な顔されてますよ俺の幼馴染さんが、
「別に良吾がどんな交友関係を持ったとしても僕には関係は無い。だけど、少しだけ寂しかった」
「あぁ」
「さっき見てたけど仲良さそうに喋ってたし、偶に廊下で一緒に居る所見るし、村瀬さん可愛いからもしかしたら僕の生活が脅かされるかもって」
「自分の為かい!」
心配して損した。どうせ寂しがり屋な琴奈を置いて俺が村瀬さんに尻尾を振ると思っている様だが、
「村瀬さんは可愛い思うけど」
「あぁん?」
二度目のメンチご苦労様です。
「タイプでは無いし、相手も同じだと思うかな」
「そっか、なら良いとは......ならなよね」
「何故?」
寂しがり屋な琴奈を見捨てたりはしないと言ったのに話が読めない。何を求めているのだろうか? もしかして俺の事が好きだから嫉妬してるとか............無いか。琴奈って俺の事兄弟的な感じで見てるだろうし、
「家族が取られたみたいな」
「(当たってて良かった。勘違い野郎はごめんだぜ)」
「だから不安だった」
「それはすまん」
「実質家族(未来の夫婦)なんだよ。他の人との距離感を考えてほしいかな......重いよね」
多分家族でも重いが、有原家は信じられないくらいに仲が良く多分家族愛が強いのだろう。だがらか知らないが、琴奈のおばさんから「あの子をどうぞ宜しくお願いします」と高校卒業時に泣きながら言われた記憶が今でも鮮明に残っている。
「いや、家族なら普通なのかな」
「だよね。良かった、良吾がもし......重いとか言ってたら何したか分からないよ」
目が勿論笑っていない。それに持っているバックのショルダーを握り締めている。実に怖い。二分の一はスリル満点だな。
「それよりね。今日はどうする?」
「あぁ、残りは」
「多少ならあるよ」
「だったら今日作っておくよ」
「良吾はいい夫になるね。僕が確信を持って言えるよ」
会話を切り上げた俺は、プリントを指差して琴奈もプリントを出して一緒に取り組んだ。ガクリィなら俺の方少し上だが地頭では当然負けているので、
「ここはこうかな」
「へぇ......凄」
お互いに協力しながらプリントを終わらせた。次の授業まで昼食を食べて過ごそうと考えていたが、琴奈は動かない。察してくれていると思っていたが自惚れだった。
「あの、ご飯食べませんか?」
「先に村瀬さんの事、話そっか」
「嫌々、さっきも言ったけど何もない」
ギャル大学生とのキャンパスライフは男子大学生の夢だが、そこまで俺は酔っていない。美人幼馴染とのキャンパスライフも違うけど、
「僕はさっき何で仲良く話しているのか聞いたけど」
「ど?」
「何で浮気するの?」
浮気? 愛し合った男女が相手を裏切る行為、それが浮気だが、今の俺達にはその言葉は使えないはずだが、もしかしてパラレル世界でもあるのか。
「浮気はしていない」
「してる。他の女と居て話して笑い合って時間を共にしていた」
「エッチなことは」
「あぁん?」
冗談から始めた俺は地雷の上で尻餅をしたらしい。琴奈の額に漫画で見る怒りマークが付いている。それくらい不機嫌だが、話を脱線させた俺は軌道修正も行える。
「俺達は幼馴染だ。浮気は存在しないはず」
「もし僕が他の男と仲良く話してたら良吾はどう思う?」
想像したら......メチャクチャ嫌だ。とは思わない。友達なら別に良いし、恋人なら多分素直に応援できるだろう。
「一緒に混ざるかな」
「馬鹿ですか?」
琴奈は俺のスマホを奪ってダッシュで去って行った。現代っ子の必需品を奪った幼馴染を眺めながら、
「最近物無くなる事......多くね」
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