第54話 再会
武器や食料が確保できたことと、王の軍勢がこちらに向かっていることを伝えると、砦の中は歓声に包まれた。
アニスはなぜオドが妥協案を出してきたのか、背景をようやく理解することができた。
「おそらく私と子供たちを和睦の切り札にするつもりだったのだろう。どこまでも姑息なヤツだ」
アニスは今度は逆に敵に降伏を呼びかけることにした。
砦の門の上に立ち、声を張り上げて、反乱軍に語りかける。
「ノルデンは負けた。王の軍は王都を奪還し、現在こちらに向かっているところだ。今なら貴族以外は命を助けてやる。皆、どこへでも行くがいい」
すると一人、また一人と陣を離れる者が出始めた。
その日の夕方までには多くの者が戦場を後にし、反乱軍の陣容は見るからにみすぼらしくなった。
敵は、逆に一気に追い詰められた。
三日後、待ちに待ったカリアスの軍勢がチェンバネに現れた。
大軍を目にした途端、残った反乱軍も一目散に逃げ去った。
歓声に包まれて砦に入ったカリアスは、中で待っていたアニスと子供たちの元へと駆け寄った。
「王妃!」
「陛下、遅い!」
二人はしっかりと抱き合った。
続いてカリアスは子供たちを一人ずつひしと抱きしめた。
「皆、よく頑張った。無事でよかった!」
「父上、ぼくたち、母様の言いつけを守って、我慢したんだよ」
口火を切ったのは、ミルンだった。
「私も」
「ぼくも」
アンナもパトリックもその後に続く。
すると、こらえきれなかったのか、ミルンが、堰を切ったかのように、あふれ出る涙をぬぐい始めた。それを見たアンナもパトリックも、わあわあ泣き始める。
カリアスもアニスも、これまで気丈に振る舞ってきた子供たちの姿に、涙を禁じえなかった。
「本当にすまなかった。でも、敵はもう、すべてやっつけたから、安心しておくれ」
「さあ、みんなでパルシャガルのお城に帰りましょう。お父様がいれば、もう何も心配することはありませんよ」
カリアスは、アニスと子供たちをまとめて、その腕の中に包んだ。
結局、今回もまた、かつて同様、涙、涙の再会となった。
「馬鹿息子!」
「クソ親父!」
なんなら、白髪の増えたヴァイツァーと、アルフレッドの親子も抱き合って涙の再会を果たした。
ちなみにカルザースとオドは逃亡を図ったが、日頃の行いのせいか、部下の裏切りに遭い、すぐにカリアスの元へ引っ立てられた。
こうしてアニスの家族は再び一つになり、クルキアに、また平和な日々が訪れたのであった。
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