いくらどん夜行

へのぽん

夜行


 山あいの村、とある奇妙な風習がある。海のことなど知らない、はるか昔から伝わる儀式が、今も残る。


 夏の夜、火柱を前に皆が祈る。

 声を合わせて。


 どんどんどんどん

 いくらどん


 どんどんどんどん

 いくらどん


 日が昇るまで続くのだ。


 僕たちは村の因習を探るために来たんだ。生贄が捧げられる、いにしえからの忌まわしい村……誰か来たようだ。


 日記はここで終わっていた。

 何か聞こえる。


 どんどんどんどん

 いくらどん




 どんどんどんどん

 いくらどん



 どんどんどんどん

 いくらどん


 どんどんどんどん

 いくらどん


 どんどんどんどん

 いくらどん

 どんどんどんどん

 いくらどん

 どんどんどんどんいくらどんどんどんどんどんいくらどんどんどんどんどんいくらどんどんどんどんどんいくらどんどんどん……


「声が近づいてないか。何だか僕の体が勝手に動く……まさか」


 いつの間にか僕も彼らと一緒に儀式に入っていた。


 どんどんどんどん

 いくらどん

 どんどんどんどん

 いくらどん


 まだ意識のあるうちに記しておく。この奇祭を見たものは、百一番目の仲間になるんだ。見たら逃げろ。もうダメだ。


 いくらどん夜行……


「父さんたちもこの輪の中に!?」


 どんどんどんどん

 いくらどん


 了

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