サイとウシツツキのぼうけん
霜月あかり
サイとウシツツキのぼうけん
アフリカの広いサバンナに、サイのサムがいました。
大きなツノをかがやかせ、どっしん、どっしんと歩いています。
サムの背中には、ちいさな鳥のピコ。
ウシツツキのピコは、いつもサムの背にとまって虫をついばんでくれる友だちです。
「サム、今日もツノがピカピカだね!」
「もちろんさ! ぼくのツノがあれば、なんだってできる!」
サムはそう言って胸をはりました。
ピコは首をかしげます。
「じゃあ、今日はいっしょにいろんな動物を助けに行ってみようよ」
こうして、ふたりのぼうけんがはじまりました。
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「うーん……あの木の上の草が食べたいのに、届かないんだ」
シマウマが見上げて困っていました。
サムはすぐにツノをふって、バキッ!と枝を下にたおしました。
シマウマは大よろこび。
「ありがとう! サムのおかげでお腹いっぱいだよ」
サムは鼻をふんと鳴らしました。
「ほらな? ツノがあれば、なんでもできるんだ!」
ピコは小さく笑いました。
「たしかにすごいけど……まだまだこれからだよ」
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つぎに出会ったのはカバ。
「川がかわいてしまって、水がないんだ」
サムはツノで地面をゴリゴリ掘りました。
すると、じわじわと水がしみ出し、小さな水たまりになっていきました。
カバは大きな口をあけて水をごくごく。
「助かったよ! サム、きみは力もちだね」
サムはますます得意げになりました。
「やっぱりツノがあれば何でもできる!」
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さらに進むと、インパラがライオンに追われています。
「たすけてー!」
サムはどしんどしんと走り、ライオンの前に立ちはだかりました。
ツノをふり上げると、ライオンはうなり声をあげて逃げていきました。
インパラは涙をぬぐって言いました。
「サム、あなたは勇敢なヒーローだわ!」
サムは胸をそらし、ピコに自慢しました。
「どうだ? ぼくのツノさえあれば、なんでも解決できる!」
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夕方、サムのお腹がぐうっと鳴りました。
「おいしそうな実が木の上になってるぞ! よし、ツノで……」
でも、いくらツノをふっても実には届きません。
木は高すぎたのです。
「うーん……どうしてだ? ぼくのツノなのに……」
サムはしょんぼり、目を伏せました。
そのとき、ピコが羽をばたつかせました。
「サム、まかせて!」
ひらりと飛び立ったピコは、木の上にとまると、実をついばんでポトンと落としました。
サムはパクリ。
「おいしい! ピコ、ありがとう!」
サムははっと気づきました。
「ぼくのツノはすごいけど……ピコがいなきゃ届かないものもあるんだね」
ピコはにっこり笑いました。
「そうだよ。サムにはツノがある。ぼくには羽がある。ちがう力を合わせれば、もっと強いんだ」
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サバンナの空は夕焼けにそまりました。
サムとピコの影は長くのび、まるでひとつにつながっているように見えました。
サムはしみじみつぶやきました。
「ツノだけじゃなく、友だちがいてくれるからこそ、ぼくは強くなれるんだな」
ピコがうなずきます。
「その通り!」
ふたりは並んで歩き出しました。
大きなツノと、小さな羽。
ちがう力を持つふたりの冒険は、まだまだ続きます。
サイとウシツツキのぼうけん 霜月あかり @shimozuki_akari1121
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