第50話残る脅威、揺れる決断
試練の光景が消え去り、俺たちは村の広場に立ち尽くしていた。
黒い結晶は脈動を弱めたものの、未だ完全に消滅せず、赤黒い光を微かに放ち続けている。
村人たちは怯え、ざわめいた。
「また……あれが目を覚ましたらどうするんだ……」
「壊すべきだ……! こんなもの村に置いておけない!」
恐怖と怒りが交錯し、空気は重く張り詰める。
長老が杖を突き、静かに言った。
「アレン。お前の選択が、この村の未来を左右するだろう」
俺は槍を突き立て、結晶を見据えた。
試練を経て得た力の余韻は残っている。だが、腕には黒い痕がさらに広がり、皮膚の下を這うように痛みが走っていた。
死を選ばず生きて力を解放した代償――その証が刻まれている。
ナギサが俺の腕にすがり、必死に叫ぶ。
「もう無理はしないで! アレンまで壊れちゃったら……ナギサ、どうしたらいいの!?」
その涙声は、不安が入り混じり、聞く者の胸を締めつける。
ミレイユは視線を結晶に注ぎ、深刻な声で言った。
「壊すのは危険。でも、封じる方法を探る価値はあるわ。魔術的な構造を解析すれば、不死の力を断つ手がかりになるかもしれない」
海斗が前に出て、短剣を腰に戻した。
「でも、時間をかけすぎればまた不死の兵が現れる。俺の知識だと……ゲームでも“リスポーン地点”を残せば、敵は何度でも復活する。封じるだけじゃ足りないかもしれない」
村人の声は二つに割れる。
「危険を冒すな! 今すぐ壊せ!」
「いいや、利用できるなら力になるはずだ!」
混乱する空気の中、俺は深く息を吸い込んだ。
「決めるのは俺だ……。俺は、死んで力を得ることを選ばなかった。だからこそ、この結晶も軽々しく破壊するわけにはいかない」
俺の言葉に村人たちは黙り込み、次の一言を待った。
「――だが放置もできない。調べ、封じ、必要ならその時こそ破壊する」
長老が目を細め、ゆっくり頷く。
「……分かった。だがその責任はすべてお前が背負うのだぞ」
責任。その言葉の重さが胸に突き刺さる。
黒い結晶は弱々しく光りながらも、確かに脈動していた。
村人たちの不安、仲間の想い、そして俺の決断――全てが絡まり合い、次なる戦いの影を呼び込んでいた。
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後書き
第50話では、試練を経た後の村での議論と、結晶をどう扱うかを巡る決断が描かれました。アレンは「封じて調べ、必要なら破壊する」という選択を下し、責任を一身に背負うことになります。
次回は、この結晶を巡る調査が始まり、思わぬ人物が新たな動きを見せる展開となります。
魔王様の部下だった俺、雑魚と思われ追放されるも死ぬと強化されるクソ仕様でした 髙橋ルイ @rui78936
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