第4話 ガチャの性能が聞こえてくる

目が覚めた。

あれは夢じゃない。実感が骨の奥にまで残っている。


アサルトライフル――〈M4カービン〉。

この世界には存在しないはずの兵器だ。

だが俺には見覚えがある。FPSゲームで散々使い慣れ、サバゲーでも一番欲しかった武器。剣で血を浴びるより、銃の引き金を引くほうが、ずっと性に合っていた。


……だからか?

「欲しい」と思った瞬間に、異界に存在しない銃がこの手に宿ったのは。


思い返せば、体力基本値の異常な高さもそうだ。ずっと心臓の病気で病院から出た記憶のないそんな僕は病気になりたくないっといつ望みが状態異常の克服能力を優先して与えたのかもしれない。

結果としては好都合だ。


だが――ガチャで引いたアイテムは、いったいどこに消えた?

基本値は体に吸収されたのだろうが、武器としてのM4カービンは行方知れず。


そう思った瞬間。

指先に、影がにじんだ。

薄靄のように形を変え、俺が握る仕草に呼応して、黒鉄の輪郭が現れる。

それは確かに――M4カービンだった。


声なのか、あるいは直感なのか。

脳裏に情報が流れ込む。


念じれば、ガチャで得た武器・防具・スキルは自由に出し入れ可能。

スキルの性能も、手に取るように理解できる。


――たとえば《幻影盾(ファントム・シールド)》。

レベル1の今は、木の盾程度の防御力しかない。だが三枚の半透明の盾が自動で俺を守る。成長すれば、きっと脅威となるだろう。


――《スキル譲渡》。

本来ならひとり一つが限界のスキルを、他者に渡すことができる。

評価はC。だが、使い方次第でA級にも劣らぬ可能性を秘めている。


――《鑑定》。

まずは食えるかどうかの判別から。レベル5程度の人間なら、人間の内側すら見抜けるという。


そして――M4カービン。

弾倉には35発。ひとつ生成するのに魔力15を消費する。

俺の魔力は、元が5。そこにボーナスで15上乗せされ、合計20。

つまり、まずは一つ弾倉を作っておけば、あとは回復のたびに補充できる。


しかも、この銃は俺専用に認識されている。他人には使えない。

譲渡スキルを使えば別の者に所有を移せるが、今のところそんなつもりはない。


詳細が、鮮明に脳裏へ刻み込まれていく。

知らず、口元に笑みが浮かんだ。


――これなら生きていける。


外はまだ真っ暗だった。

早く朝になって、この奇妙な力について相談したい。

そう思って横になるが、興奮でまぶたは閉じない。


結局、夜をほとんど眠れずに過ごし、朝を迎えたとき――俺は不機嫌きわまりない顔で目をこじ開けることになるのだった。

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