放置ゲー転生。レベルを犠牲にスキルを会得、これが一番最強の道だって俺だけが知っている〜放置してりゃ勝手にレベルが上がるってのに、村の娘が俺を放置してくれない件〜

甲賀流

第1話 2D放置ゲーに転生しちゃった件


 Last Re:Quest(ラストリクエスト)。


 これは俺こと、高坂理央が人生を賭けてやりこんだ、2Dの放置系RPGゲーム。


 今、俺はそんな世界に足を踏み入れたらしい。


 もう一度言う。


 2Dの放置系だ。

 なんならキャラも世界もドットだったゲーム。


 だったはずなのに――


 なんだ、この景色。


 透き通るほどの青い空、白い雲。

 そしてこの広がる大草原。


 まるで異世界ファンタジーみたいじゃねぇか。


 えっとたしか、俺は事故で死んで……それで、目の前にあのゲームの起動画面が広がったんだよな。

 ロゴがピコンと鳴って、白背景に「PRESS START」って。


 で、次の瞬間にはもう、ここにいたわけだが……。


 どういうことだ?


 草が風に揺れてる。

 空の色も変にリアル。


 俺の服も現実のまんまじゃん。


 てことは顔も、そのまま?


 ペタペタ触ってみた。


 よかった、ドット絵じゃない。


「……これは夢、か?」


 次はパチパチと自分の頬を叩いてみた。


 痛い。

 むしろちょっとヒリヒリしてきた。


 待てよ?

 仮にだ、ここがあのゲームの世界ならステータス画面があるはず。


 これが夢だろうが現実だろうが、まずは自分のステータスを確認する必要があるよな。


「えっと……開け、メニュー?」


 何度か念じてみると、ピロンと脳内に音が鳴って、視界の右上に半透明のウィンドウが開いた。


──【STATUS】──

レベル:1

職業:なし

HP:30/30

MP:1/1

攻撃力:5

防御力:3

敏捷:4

知力:2

運:1

スキル:殴る、蹴る、掴む

レアリティ:なし

────────────



 いや、ひらけるんかい。

 テキトーにやったらできちゃったよ。


「……てか誰だよこの原始人」


 なんだ殴る蹴る掴むって。

 こんなの初期のモンスターにもいねーわ。


「それにレアリティがなしだとぉっ!?」


 その辺の村人でも星1はあるよ!?


 おい、俺がどれだけこのゲームに突っ込んだと思ってんだ。

 祝祭限定ガチャ、水着ガチャ、正月英雄ガチャ……全部引いたんだぞ。

 課金した分、現実の食費削っででも続けてたのに!


「それがこの有り様かよ……せめて殴る、蹴る以外のスキルを寄越してくれ……」


 そんな絶望に浸っていたときだった。


 バキバキバキバキ!


「っ!? な、なんの音だ……?」


 木の枝を踏み砕くような足音。

 それも、1本や2本じゃない。

 明らかにデカい。


 目の前の森だ。

 あの奥から、何かがこっちへと迫ってきている。


 バキバキッ……!


 一番手前の木々をへし折った音。地面が揺れた気がした。


 俺は広い草原の中心、意味がないと分かりながらも反射的に腰を落とす。


「おい、マジかよ」


 出てきたのは、鹿だった。


 まぁ鹿といってあれだ、筋肉のつき方もエグいし、そりゃもうガタイは大きいのなんのって。


「ケルピア、なんでお前がここに……?」


 あれは1−5で出てくる中型モンスターだ。


 1−5ってのは、1−1、1−2と続く進行形のクエスト名。


 多分ここは、見たところ俺の知ってる『Stage1:はじまりの草原』で間違いないだろう。


 そして俺は、今さっきこの地に降り立ったばかり。


 てことは――


「ここが1−1じゃねーってことかよっ!?!?」


 バグか?

 俺が転生したのって、もしかしてバグった世界だったのか?


「うわ、来る来る来るっ!!」


 って言ってる場合じゃない。


 逃げねぇと!


「うおおおおおっ!」


 俺は勢いよく飛び退いた。


 まっすぐ突進してきたケルピアは、俺を抜いても尚、直進していく。


 だがキキッとスマートに急ブレーキ。

 体ごと俺に向き直し、再び突進。


「なんなんだよ、コイツ……!」


 俺はもう一度ケルピアを躱わす。


 相手は直進しかできねぇみたいだ。

 後は俺が攻撃に転じるだけ。


 チャンスがあるとすれば――


「今っ!!」


 ケルピアの突進を避けた後の背後をとる。


 ここに一発、渾身のブローを。


「いけ! 俺の攻撃スキル、殴r……うぶ……っ!」


 ケルピアは俺を横目で見るなり、後ろ脚で蹴りをかましてきたのだった。


 左後脚のひづめが腹部に深くめり込む。


 グギィ……ッ!


 骨の奥まで届いた音。


 俺は飛んだこともないほど後方に、吹っ飛ばされた。


 い、痛い……っ!?


 痛い、痛い……!


 痛すぎる!!


 口の中が血生臭い。

 視界もグラグラする。


 なにこれ、ゲームの中とかじゃねぇの?


 普通に……死にそう、なんですけど。


 そんな時、俺の目の前にウィンドウが開いた。


 最初は走馬灯なのかと思った。


 だけど違った。


【緊急システム:レベルを分解してスキルを獲得しますか?】


 ▶ はい

 ▶ いいえ



「……は?」


 レベル分解?


 そうだ、ラストリクエストにはそんな機能があったな。


 オート戦闘の放置ゲーにおいて、レベルやステータスは最大の武器。

 にも関わらず、そのレベルを犠牲にしてスキルを得るというクソ機能。


 たしかリリースしてから今までずっと、まともに使われたことがなかったんじゃなかったっけ?


【警告:レベルがマイナスになります。それでも分解しますか?】


「ふざけんなよ……やっぱりクソ機能じゃねぇか!」


 でも。


 目の前にはモンスター。


 このままじゃ、確実に死ぬ。


「……ああああぁぁぁもうっ!! 死ぬよりマシだ! 分解してやるぜ、クソ運営ィ!」


 ――ピピッ


 俺が「はい」を選んだ瞬間、脳内に何かが流れ込んだ。


【レベルを10分解して、新しいスキル空裂脚くうれっきゃくを会得しました】


《空裂脚》


▶ 説明文:

俊敏な後脚によって空間を裂くように放たれる、鹿型魔獣ケルピア特有の後ろ蹴り。

対象が攻撃動作中にのみ反応し、背後からの急襲によって確定で怯み+転倒を与える。

ガード・シールド・パリィ不可。


発動時、地面に斬裂の残光が走るため、周囲にも心理的制圧効果を持つ。


「……うそ、だろ?」


 殴る、蹴る、掴む。

 原始人顔負けのスキル欄に並んだ、俺の新たなスキル――それは鹿の後ろ蹴りだった。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



本日より新作投稿します。

現時点で40000字ほど書き溜めがあります。

いつも通り、ランキングが伸び続けるようならひたすら続きを書きますが、ある程度で停滞するようなら、キリのいいところで完結させます🙇


どうかフォローや★などで、応援よろしくお願いします✨️


本日初日は12時に2話、17時過ぎに3話投稿し、明日からは毎日12時過ぎに投稿予定です‼️

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