パンデモニウム・フリークス

プロローグ

 爆発が起きていた。



 夜の工業地帯。その一角。運送会社の倉庫の上だった。



 爆発は何度も立て続けに起き、倉庫の屋根を吹き飛ばしていた。




───ゴァアアアアアア!



 その中心に居るのは怪物だった。虎と猿と鹿の頭。からだはまるでクモ。キメラとしか言いようのない外見。


 怪物は吠えたけり、目の前の敵を威嚇していた。



「兵藤さん、爆発が激しすぎます。目標の視認が困難です。少し控えてください」


『ええ? でも爆発であいつの動きを誘導してるんだから。そっちで対応して欲しいな』


「建造物の損害も甚大です。何枚始末書を書くことになるか分かりません」


『無茶言うよね。なんにも壊さずに魔獣を倒すなんて出来っこないのに。でも書類書くの面倒だなぁ。抑えるしかないかぁ』



 怪物の目の前の敵は、人間は何者かと通信で言い合っていた。


 目の前の人物は女性だった。目の前の人物は巨大な斧、ハルバードを構えていた。そして、目の前の人物はメイド服を着こんでいた。



───ガァアアアアア!!



 怪物は吠えながら、目の前の人間に突進する。ダンプカーほどの大きさがある怪物はその突進を受けただけで人間なら呆気なく死亡するだろう。



「カテゴリー4、バアル型キメラ種。討伐します」



 そして、メイド服の女性もハルバードを振り上げ、怪物に突っ込んでいった。



───ゴガァアアア!!



 怪物はなおも吠えながら猛進する。



「拘束制御術式、2番まで解放。『アステリオス』偽装解除!!!」



 女性の声と同時に斧の形状が変形する。刀身が開かれ、金色に輝く。


 そして、



───グガァアア!!!



 猛進する怪物、その目の前でひと際大きな爆発が起きた。怪物は視界を奪われ、その動きを一瞬鈍らせる。


 そして、



「はぁあっ!!」



 その爆発を切り裂くようにメイド服の女性が怪物に突っ込んだ。


 そして、斧を振り下ろした。



───ゴガァッ!!!!



 それと同時だった。怪物の前に虹色の光の壁が現れたのは。


 それはまるで盾のように怪物を守っていた。



「抗体防壁は効きません!!」



 しかし、女性の斧はその壁をいともたやすく貫通し、そのまま怪物をぶった切った。



───グギャアアアアア!!!



 斧の切っ先は1mほどであるにも関わらす、怪物は真っ二つに両断された。


 怪物は叫び、その体から血が噴水のように吹きあがった。


 そして、その二つの体は倉庫の屋根に倒れ、そのまま屋根を突き破って下に落下していった。



『あーあ、始末書追加だ。今のはあんたの分だからね』


「わ、分かっています。事象制御が切れたのだから仕方ありません。避けようがありませんでした」


『うまいこと言うねぇ。私も言い訳考えとこう。じゃあ、外で待ってるからねぇ』



 そう言って通信は切れた。



「状況終了。帰りにコンビニでクレープでも食べるとしましょう」



 そして、女性は言い、斧の柄の先を屋根に置いた。


 深夜2時、片田舎の小都市での出来事だった。

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