第2話 まねかれ猿

 まねかれ猿。

 みなさんご存知、三猿(見ざる、聞かざる、言わざる)の遠い親戚。

 まねかれ猿は明るくて愉快で芸達者。だから宴会によく招かれる。つまり『招かれ猿』なのだ。

 今回は、まねかれ猿のエピソードをひとつ、紹介しよう。


 まねかれ猿は毎日のように、まねき鯛(まねき鯛についてはまた後日)に招かれて、宴会芸を披露していた。

「これが噂の宴会芸!」

「さすがまねかれ猿だ!」

 やんややんやと囃し立てられ、まねかれ猿は上機嫌。

「明日は俺の家に集まって、楽しくやりましょう!」

 そんなことを言ってから、千鳥足で家に帰った。


 翌日。

「まねかれ猿はいらっしゃいますか?」

「昨日お招きいただいて」

 昨夜一緒に盛り上がった面々が、お客さんとして次から次へとやって来た。

 応対したのはまねかれ猿のお父さん。

 二日酔いで二階の部屋で、寝こけている息子に向かって、大きな声で呼びかけた。

「おい、まねかれ猿! 客だぞー!」

 その声にみんな、凍り付いた。


「招かれざる、客……!?」


 まねかれ猿は、青い顔ですっ飛んできたそうだ。

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