勇者パーティの「荷物持ち 兼 雑用係」は、ただの「不器用で貧乏」な少年のくせに妙に強い。(だけど不遇)
茶電子素
第1話 少年、今日も太鼓を持つ!
「レント、あんたさぁ……マジで何の役に立ってんの?」
聖女リリスの冷たい視線が、レントの心臓をピンポイントで刺してくる。
だがレントは笑顔だ。筋肉でできた笑顔だ。
「いやぁ〜リリス様のその美しいお声を聞けるだけで、今日も生きててよかったって思えますぅ〜!」
「キモッ」
即罵倒だった。だがレントはめげない。
めげたら終わりだ。なぜなら彼は、勇者パーティーの「荷物持ち兼雑用係」。
しかも不器用で、ただの貧乏。魔法も使えない。剣も振れない。料理もできない。
地図も読めない。方向音痴。虫が苦手。でも――
「よっこいしょっと!」
レントは、収納魔法なしで、テント3張り、食料袋5つ、武器ケース2つ、聖水樽1個、そして勇者の特注ベッド(なぜかキングサイズ)を、肩に担いで軽々と運んでいた。
「……あんた、いくらゴリマッチョだからってよくそんなに持てるわね」
「いやぁ〜筋肉は裏切らないって言いますしぃ〜!」
「筋肉ネタうざっ」
聖女の冷たい一言に、レントは心の中で泣いた。
だが顔は笑顔。筋肉でできた笑顔だ。
勇者パーティーは、イケメン勇者アレンを中心に構成されている。
アレンは顔がいい。とにかく顔がいい。顔がいいだけで、剣も魔法もそこそこ。
だが顔がいいので、聖女リリス、弓使いのエルナ、格闘家のミナ、そして盗賊のカレン、全員がアレンと肉体関係を持っている。
レントは知っている。というか、テントの設営係なので、夜の営みの音を毎晩聞いているのだ……つらい。
「レント、今日の夕飯は?」
「はいっ!干し肉と、昨日の残りのパンですっ!」
「は?またそれ?勇者様にはもっといいもの出してよ」
「すみませんっ!でも予算が……」
「じゃあ自腹で買ってきなさいよ。あんた何のためにいるの?」
「はいっ!喜んでぇ〜!」
レントは、財布の中身を確認する。3銅貨。パン1個買えるかどうか。
だが彼は走る。筋肉で走る。勇者様方のために。
しかし、その夜もレントは追放されかけた。
「ねぇ、もういらなくない?レント」
「そうだよね。荷物持ちなら収納魔法使える人雇えばいいし」
「てか、あいつ臭くない?」
「うん、貧乏臭い」
「勇者様、どう思う?」
アレンは、レントを見た。そして言った。
「……まあ、いなくても困らないけど収納魔法持ちは高いしな」
「それだけ?」
「それだけ」
レントは泣いた。心の中で。でも顔は笑顔。筋肉でできた笑顔だ。
「いやぁ〜アレン様のそのお優しいお言葉、心に染みわたりますぅ〜!」
「キモッ」
……即罵倒だった。
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