月光を味わう

カニカマもどき

月光を味わう

 月光が美味い季節です。


 月光に一番合う食べ物って、何ですかね。

 ベタですが、やはり秋刀魚さんまは外せないと思うのです。

 脂の乗った秋刀魚に、大根おろしと醤油。

 そして、すだちの代わりに月光。軽く浴びせるくらいが良いですね。

 これだけで、酸味とも甘味とも違う――月味つきみとでもいうべき、独特の爽やかさというか、深みが加わってきます。

 はらわたの苦味や、大根の辛味とも絶妙にマッチして――

 まあ一言でいうと、美味い。

 鈴虫の声でも聴きながら味わいたい、秋の風物詩ですね。


 揚げ物全般にも月光は合いますが、特に相性が良いと思うのは、あれです。

 コロッケ。

 熱々の。

 牛肉とかクリームソースとかのやつじゃない、じゃがいものシンプルなやつ。

 これの味付けに、ウスターソースと月光。

 ウスターソースは少なめで、逆に月光は結構じゃぶじゃぶ行ってしまうのが、私好みです。

 じゃぶじゃぶにしても食感は変わらず、じゃがいもの持つ甘味を邪魔したりもせず、むしろ甘味や旨みを増幅してくれるのが偉い。

 あと、秋刀魚は満月に近い時期、コロッケは半月くらいの時期の月光を使うのが、まろやかさとかの関係で、一番美味いと思っております。気温や湿度なんかにもよりますが。


 最後に、スイーツについても語っておきましょう。

 月光に月見団子やさつまいもスイーツを合わせるのはド定番ですが、今回おすすめしたいのは、クレームブリュレです。

 カラメル層の苦味が強めのやつが良い。

 これに、三日月の月光を、ざるなどでまばらに浴びせます。

 ちょっと手間ですが、これをやって、冷蔵庫で2分冷やして……というのを、7回繰り返しましょう。

 ここまでやると、カラメル層にスプーンを入れたとき、パリッという音とともに、少し発光するクレームブリュレが爆誕します。楽しい。

 そして美味い。

 なんでしょうね、この美味さは。

 手間をかけたという事実が調味料になっているのもあるのですが、優しい甘さと光に包まれて、

「ああ、月ってクレームブリュレだったのか」

 と悟るような、そんな感動的な美味さを、こいつは秘めているのです。

 未体験の方は、是非やってみてください。

 

 今回紹介したもののほかにも、月光を用いた美味い料理や食材は数えきれないほどあります。

 皆様もこの季節、存分に楽しまれますよう。

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月光を味わう カニカマもどき @wasabi014

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