第22話 支配と魅了
騎士と雑兵に見える者が一人ずつ、今我の前で跪いている。
騎士は我が殺すなと言った、おそらくこの部隊の指揮官、だがこの雑兵はなんだ?
「マルコ様とモリー様がお仕えする尊きお方に挨拶できることを嬉しく思いますと共に、今までの無礼をお許しいただければ幸いです」
「よい、許す。今までのお前たちは何だったのか教えてくれ」
「ありがとうございます! 私はブヴァード私設兵団第二督戦隊隊長ヘオヅォル、こやつは第二督戦隊付きテイマーのニコラでございます」
ああ、こやつが我の〈フィアー〉をはじいたテイマーとやらか。遠くで見ただけのときは分からんかったが、こやつ女か。
「ニコラ、貴様がつれていたオーガはどうした?」
「は、はい。オーガたちは後ろに下げております」
マルコの【支配】しか受けていないニコラは我を必要以上に恐れているようだ。
「その理由は?」
「前に、その、アリス様とお会いした時、オーガの制御に苦労いたしましたので。アリス様にオーガでは通用しないばかりか、その対処で私の全魔力を持っていかれてしまいかねない、と判断しました」
ニコラは言いにくそうに、しかしはっきりと我への対抗策と言った。声は震えておる気がするがたいしたものよ。
「分かった。ヘオヅォル、貴様は生き残りを統率せよ、マルコはついていけ。まとめ終わったら再びこい。ニコラは近う寄れ」
ヘオヅォルが一瞬躊躇ったな。ニコラの肩に軽く手を置いてから、命令に従った。
『アリス様、どうされるのです?』
『前にモリー、お前に教わった魅了をこやつに試してみようとな』
『すでにアリス様もお気づきだとは思いますがこのニコラ、隠しておるつもりですが女です。同性に対して魅了は効きづらいですが、よろしいのですか?』
『構わぬ。それぐらい出来ず、魔王を名乗れるか』
「ニコラよ、もっと近寄れ、手が届かぬ」
勇者であれば必殺の間合いだろうから危険なのだが、まあ大丈夫だろう。少なくともニコラは勇者ほどではない、と思う。
ニコラは意を決したかのように我の間合いに入り、跪き、頭を垂れた。
「震える必要はない。ニコラ、お前には才能がある。取り立ててやるつもりだ」
そういって手を差し出してニコラの顎を持ち、顎を上げさせる。
半ば強制的に目を合わせ、魅了を行う。
我はもともと魔眼の使い手である。
これがもっとも効力の高い魅了が行える行動のはずである。どうだ?
「アリス様、ありがとうございます!」
震えもなくなり、急にはきはきと答えるようになったな。魅了が効果を表したと考えていいだろう。
「モリーよ、しばらくニコラを任せる。統率せよ。いったん村に戻るが、その後討ち入るぞ」
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