再会
真白めい
帰り道
「まもなく——、——。お出口は左側です」
乗車している列車が最寄り駅に到着するアナウンスが流れる。私は座席から立ち上がり、扉付近へ歩を進めた。
生まれ育ったこの土地は『田舎』と呼ばれるような地域だけれど、平日の午後六時を過ぎたこの時間はそれなりの乗客数で溢れている。
——ガタン
その時、列車が大きく揺れた。私は思わぬ衝撃に体が耐えられず、扉付近に立っている女性にぶつかってしまった。
「あっ、すみま……」
反射的に謝罪の言葉を述べようとしたが、女性の顔を見て思わず言葉を失った。相手も私の顔を見て驚いた表情をしている。
「久しぶり」
小柄で可愛らしい彼女に声をかけられる。高校を卒業してすぐに音信不通になってしまったので三年ぶりだ。
「
思わず彼女の名前を口にすると同時に列車が最寄り駅へと到着し、目の前の扉が開く。
「降りるよね?」
彼女の問いにこくりと頷き、二人で列車を降りる。
私は後ろを歩く彼女に対して「少し話さない?」と提案し、駅ホームに設置してあるベンチを指さす。彼女は「次の電車が来るまでなら」と答えた。発車標に表示された時刻になるまでは四十分ほど時間がある。
「元気にしてた?」
ベンチに腰を降ろすと彼女のほうから口を開く。私は、「元気にしてたよ。茉那ちゃんは?」などとありきたりな返事をして、自然と近況報告をし合う。それから、高校卒業後に就職した職場への愚痴や高校時代の話で盛り上がる。
こんな風に話をしているとまるで高校生に戻ったみたいだ。
しかし、音信不通になってしまった理由や当時聞きたかったことは聞けず、あっという間に時間が過ぎてしまった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
次の列車が発車したタイミングで彼女が立ち上がる。
その時、ふと手首が視界に入った。いくつもの茶色くなった傷跡の上に赤い傷を見つける。あまりの痛々しいそれに胸がズキリとする。
彼女は私の視線に気が付いて両手を隠すように後ろへと回した。
「……また、会えるかな」
何も見なかった振りをして立ち上がる。
「うん、また会えるといいね!」
そう彼女は笑顔で答えた。
しかし、十年以上経った今でも再会するどころか彼女から連絡が返ってくることは無かった。
高校時代、一番の親友だと思っていた茉那ちゃん。
いつも笑顔で愛らしい彼女が何に苦しんでいるのか聞くことができなかった。知る勇気が無かった。関係が変わってしまうことを恐れた……。
どうか、茉那ちゃんが幸せを感じていますように——。
私はただ彼女の幸せを願っている。
再会 真白めい @may_612
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