第二章 :14 エッグチェーン・オーバーリンク

「来いよおおお!」

たかしが踏み切る。足が滑り、盛大に転ぶ。「いってぇ! でも、たぶん、これで届く!」


卵の鎖が勝手に伸び、空気を裂く。ビュン。

ゆめのトング打撃、鬼頭のラムネ爆ぜ、ゆうじの反射光、藤広のスモーク——粒子になって鎖へ吸い込まれ、節目がカチン、カチンと締まる。


【AIアナウンス:過積載警告 閾値接近 たぶん】

赤いバーが端で震える。


巨大モップが白雨を振り下ろす。

「今」ゆめの号令。

「うおおおお、ひょっとするといけぇぇぇ!」

ヤケクソの回転。円、楕円、最後は歪な渦。だが力は形を選ばない。

光の鞭が空間を断ち、ヒュドンと芯を打ち抜く。ボルトがポロポロ外れる音。


バキン。糸束が崩れ、柄が斜めに突き立つ。

たかしが最後の一振りを叩き込む。「スコーしだけ足りない? いや——もう一発!」

ドガァン。


空調が息を吹き返し、白い霧が薄れる。

ステータスが更新される。


――――――――――

【フロアクリア:日用品】

報酬:レベル+1 たぶん

ポイント:3

選択強化:体力/攻撃/スキル安定化

称号:紙吹雪を越えて

――――――――――


紙片がゆっくり落ちていく。

「……安井さん」ゆめが目を閉じ、トングを胸前で合わせる。

藤広は小声で「すみません」とだけ言う。

鬼頭はラムネ瓶を床に置き、蓋を外す。「行くぞ。道は通った」


たかしの画面隅で、乱れていた文字が一瞬だけ揃う。

【保安補助:接続試行中】

たかしは小さく頷く。「俺、たぶん、次もやれる」

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