間章3:藤広の独白
……俺も、ステータスボードは見える。
他の連中と同じように。
体力、攻撃力、防御力。数字は小さな上下を繰り返す。
時に商品スキルが光って、“発動”って文字が浮かぶ。
——普通だ。
だが、あいつだけは違う。
たかし。
あの直情バカ。
投げるだけの卵に、なぜか鎖のエフェクトが出たり、敵を拘束したり。
何より——
【スキル発動:エッグチェーン】
【補正値:たぶん上昇中……】
……これだ。
俺や安井やゆめやゆうじのスキルには、こんな“声”は流れない。
俺の漂白剤だって、モップだって。
ただ「発動」って表示されるだけだ。
なのに、たかしだけは“AIアナウンス”が添えられる。
しかも中身が妙だ。
“たぶん”“おそらく”“スコーし”。
——馬鹿にしてんのかと思う。
だが、そのふざけた補正が、現実をねじ曲げている。
俺たちが全員で攻撃しても削れなかった壁を、あいつの卵だけが割った。
ホチキスも、トングも、霧も、全部の効果が束になったのは……
あの不確定補正がトリガーだったからじゃないのか?
……おかしい。
システムが同じなら、俺にも“補正”があるはずだ。
だが無い。俺には普通の数値しかない。
これは、選別か?
それとも……あいつだけ“別の規格”で動いているのか?
「ひぃぃ……怖いよぉ……」
俺はわざと声を震わせ、外面を繕う。
だが、胸の奥ではずっと、疑問が渦を巻いていた。
——なぜ、たかしだけが特別なのか。
——そして、この特別さは俺の生存にとって“脅威”か“利用価値”か。
……まだ答えは出ない。
けどひとつだけ確かだ。
俺は絶対に生き残る。
娘のために。
そのためなら、たかしが特別でも、利用できるなら——利用する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます